環境政策の本場ドイツで「地産地消モデル」実証を開始、NEDOやNTTドコモなどエネルギー管理

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、ドイツのシュパイヤー市およびシュパイヤー電力公社(SWS)と、スマートコミュニティ実証事業を実施することで合意した。

» 2015年07月27日 15時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 ドイツのドイツのシュパイヤー(Speyer)市は、ドイツ南東部のラインラント=プファルツ(Rheinland-Pfalz)州の南東部に位置する。ローマ帝国時代に建設された欧州でも最古の部類に入る歴史のある町で、世界遺産にも登録されているシュパイヤー大聖堂が有名だ。

 新たなスマートコミュニティ実証事業はこのドイツのシュパイヤー市と同電力公社の全面協力のもとで実施する。NEDOとNTTドコモ、NTTファシリティーズ、日立化成、日立情報通信エンジニアリングと、ドイツのシュパイヤー電力公社(SWS)、住宅供給公社GEWOが共同で行う計画で事業期間は2015年度から2017年度まで。太陽光発電で発電した電力を地産地消する「自己消費モデル」の確立に向けた技術を導入し、実証する(図1)。

photo 図1:今回の「自己消費モデル」のスマートコミュニティ実証サイト ※出典:NEDO

ポストFIT、分散型エネルギー社会実現への取り組み

 現在、ドイツでは電力需要の20%以上を再生可能エネルギーで賄っており、ドイツ政府はその比率を2020年に35%、2050年に80%にする目標を掲げている(関連記事)。太陽光発電のコスト低減に伴い、既にグリッドパリティ(再生可能エネルギーの発電コストが、電力系統から購入する電気料金と等しくなること)が成立しており、固定価格買取制度が事実上終了している。そのため、太陽光発電設備を設置した電力需要家が太陽光発電によって発電した電力を電力会社に売電するメリットが既にない状況だ。

 さらに、太陽光発電からの逆潮流(消費する電力よりも発電する電力が大きくなり、発電者の構内から電力系統へ向かう電力の流れのこと)は、配電線の容量制約から受け入れられにくい。これらに対応するため、既にインバータの出力抑制を住宅用太陽光発電設備にも課しており、太陽光発電によって発電した電力を極力、自家で消費し、電力会社に売電しないシステムを構築することがドイツ内での課題となっている。

 これらの状況の中でラインラント=プファルツ州では、2030年までに100%再生可能エネルギー導入を目標としており、太陽光発電設備を設置した電力需要家の経済的なメリットを高めるとともに、逆潮流による配電系統の電力品質低下に対処することが必須となっている。そのため、今回の実証実験を通じ、エネルギー地産地消型のスマートコミュニティの実証を行う。

日本の優れた技術力を活用

 同事業では、日本の優れた蓄電技術、ヒートポンプ温水器による蓄熱技術、HEMS(Home Energy Management System)の機能を実現する情報通信技術により実証システムを構築する。実際の生活環境のなかでの運転を通じて、太陽光発電で発電した電力を地産地消する太陽光発電の「自己消費モデル」を確立し、ドイツの重要課題である太陽光発電からの逆潮流抑制に貢献するとともに、住宅における熱を含めたトータルのエネルギーコストを低減する効果の実証も行う(図2)。

photo 図2:今回の実証事業のイメージ図 ※出典:NEDO

 NEDOでは、今回の取り組みの成果を海外での活動に生かしていくとともに、将来的に日本の再生可能エネルギー導入促進に活用できるとしている。

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