科学技術振興機構(JST)は、ゲーム理論を駆使し、電力価格を短い時間で変動させるリアルタイムプライシングを使うことで、市場参加者の利益を保証する分散型電力価格決定メカニズムを考案した。
電力システム改革による電力の自由化が広がりを見せる中、電力の「同時同量」をどう維持していくかは大きな課題となっている。電力系統では、電力需給の不均衡が周波数変動などの電力品質の低下を引き起こすため、電力の需要量と供給量は厳密に一致させる必要がある。一方で、2016年4月の家庭向け電力小売自由化や、2020年4月に予定されている発送電分離が行われると、電力の発電や販売の自由度は一気に高まり、電力の需給を一致させることが難しくなる。
これらに対応するため、JST戦略的創造研究推進事業において、慶應義塾大学の教授 滑川徹氏らは、ゲーム理論を駆使し電力価格を変化させるプライシング(価格設定)によって社会全体の公共利益が達成できる仕組みを考案。実験により、各需要家と供給者の利己的な振る舞い(個人の利益を最大化する行動)を、公共利益へと誘導できることを証明した。
同研究では(図1)のような電力市場を想定。市場管理者である独立系統運用機関(ISO)と市場参加者である電力需要家および電力供給者が電力価格を介して市場取引を行うことで、電力ネットワーク内の電力供給量の分散的な管理を行う。
ここで想定される電力市場の基本的な電力需給管理アルゴリズムは以下の通りだ。
このアルゴリズムが機能するためには、まず電力面において「需給均衡の達成」と、市場参加者が不満を抱かない「個人合理性の保証」が、前提条件として必要になる。
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