再生可能エネルギーに逆風、原子力発電の電力が増える九州の未来電力供給サービス(1/2 ページ)

九州電力が川内原子力発電所の1号機を再稼働させて、8月14日から送電を開始する。9月上旬には最大89万kWの電力を供給する予定で、年内には2号機も再稼働する見通しだ。九州では需要の少ない春に供給力が過剰になり、発電設備の出力を抑制する可能性が高まるが、原子力は対象外である。

» 2015年08月12日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 まもなく発電を開始する「川内(せんだい)原子力発電所」は、鹿児島県の東シナ海に面した145万平方メートルの敷地の中に1号機と2号機がある(図1)。いずれも最大出力は89万kW(キロワット)で、1号機は運転開始から31年、2号機も30年を経過している。東日本大震災後の2011年5月と8月に相次いで定期検査に入り、その後は4年以上にわたって運転を停止してきた。

図1 「川内原子力発電所」の全景。出典:九州電力

 2基ともに原子力規制委員会による審査に合格して、1号機が全国の先頭を切って8月11日に再稼働に踏み切った。九州電力の発表によると14日に送電を開始して、9月上旬には通常運転に移行する予定だ。さらに2号機も年内に再稼働する見通しで、両方を合わせて最大178万kWの供給力を発揮する。

 川内原子力発電所を再稼働する最大の目的は燃料費を削減することにある。九州電力は2011年度から4年連続で赤字を続けていて、同様に原子力の依存度が大きい関西電力とともに電力会社10社の中で最も厳しい経営状態に苦しんでいる。2基の再稼働で燃料費が大幅に減り、2015年度は黒字に回復する可能性が大きくなった。

 その一方で導入が活発に進んできた再生可能エネルギーは多大な影響を受ける。九州電力は原子力発電所を全面稼働させることを前提に、再生可能エネルギーの発電設備を拡大させない施策を展開してきた。2014年12月に政府に報告した内容は驚くべきもので、6基の原子力発電設備を稼働させると、電力需要が最も少ない5月の中旬には昼間の需要の5割以上を原子力による電力が占める(図2)。

図2 原子力発電の供給力と需要に占める割合(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 このうち川内原子力発電所の2基だけでも、需要の約2割をカバーすることができる。2015年1月から運用が始まった発電設備の出力制御ルールでは、地域の供給力が需要を上回ることが想定される場合に、一定の順番で発電設備の出力を無制限に抑制することができる(図3)。最初に火力発電、次にバイオマス・太陽光・風力を抑制する。地熱と水力のほかに原子力は安定的に稼働する「ベースロード電源」として対象外だ。

図3 発電設備に対する出力制御の順番(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁
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