さまざまな技術により実現した次世代フライホイール蓄電システムだが、実証実験では既に山梨県で稼働している実証試験用太陽光発電所との連系を行う。太陽光発電所は同蓄電システムを設置した米倉山のメガソーラーで、2014年度に完成した。多結晶型太陽電池3960枚を設置した950kW(キロワット)の太陽光発電所と、フィルム型アモルファスシリコン太陽電池572枚を設置した52.6kWの防草シート型太陽光発電所と連系する(図6)(図7)。
次世代フライホイール蓄電システムの出力は300kWで、太陽光による約1MW(メガワット)の出力が天候によって変動しても、電力を吸収して安定化させられるという。また実証実験では300kWの蓄電能力としたが「このシステムの利点は、モーターによる出力と、フライホイールによる蓄電能力を分けて作れることだ。そのため、大きな出力が必要な場合は大きなモーターを採用するということや、蓄電容量を上げたければフライホイールの数を増やすというようなカスタマイズを行える。また、同じシステムを接続することで蓄電容量を上げることも行えるため、幅広い用途への活用が期待できる」と長嶋氏は述べている。
同システムは実証システムであるため現状ではかなり高額であるが「通常の蓄電池システムに対してコスト競争力を持つためには、1基当たり2000万円程度にすることが求められている。ここに向けてコスト力などを強化していく」(堀内氏)。
コスト競争力などを実現しつつ、電力以外の領域への展開も検討する。早期に実現できそうなのが鉄道の変電設備などへの導入だ。「既に一部の鉄道会社ではフライホイール蓄電設備を導入し電力コストを2割程度削減する効果を得た事例もある。しかしこれは接触型の軸受けであるので、摩擦による物理的な損傷でメンテナンスの手間やコストが大きくユーザーからはこれらを低減する要望が出ている。今回開発した次世代フライホイール蓄電システムであれば、使用電力低減とともにメンテナンスコスト削減が実現できるため、ニーズに合致する」(長嶋氏)
今回の実証実験の結果を踏まえた上で、鉄道向けの実証実験なども2016年度以降に進めていくとし「数年後には実用化できるようにしたい」と長嶋氏は語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.