小水力発電で村おこし、農業用水路が新たな価値を生むエネルギー列島2015年版(21)岐阜(2/3 ページ)

» 2015年09月08日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

ダムが放流する河川維持流量を生かす

 潜在する水力のエネルギーは農業用水路のほかにもある。数多くの川が流れる岐阜県には治水用と発電用のダムが各地域に設けられている。ダムには大量の水を貯めるだけではなく、下流の自然環境を守るために常に一定の水量を流し続ける必要がある。「河川維持流量」と呼び、最近は小水力発電に利用するケースが増えてきた。岐阜県は全国の先頭を切って河川維持流量を生かした小水力発電を拡大中だ。

 2015年に入って2カ所のダムで小水力発電所が相次いで動き出した。1つは石徹白と同じ郡上市にある「阿多岐(あたぎ)水力発電所」である(図3)。岐阜県が1988年から運営している治水用のダムの河川維持流量を利用する。

図3 「阿多岐水力発電所」の小水力発電設備。出典:中部電力

 発電事業者は中部電力で、ダムの直下に発電所を建設して7月に運転を開始した。ダムから放流する毎秒0.7立方メートルの河川維持流量を38メートルの落差で取り込んで発電する。発電能力は190kWになり、年間に130万kWhの電力を供給することができる。一般家庭で360世帯分の使用量に相当する。

 もう1カ所は「新串原(しんくしはら)水力発電所」で、中津川市の隣にある恵那市で6月に運転を開始した。中部電力が1970年から発電用に運営している「矢作(やはぎ)第二ダム」からの河川維持流量を利用した小水力発電所だ(図4)。

図4 「新串原水力発電所」の小水力発電設備。出典:中部電力

 水流の落差は20メートルだが、毎秒1.6立方メートルの水量を生かして発電能力は230kWになる。年間の発電量は170万kWhを見込んでいて、470世帯分の使用量に匹敵する。阿多岐水力発電所と合わせれば830世帯分になり、これまで未利用だった水流が新たな電力源に生まれ変わった。

 環境省の調査によると、発電能力が3万kW未満の中小水力発電の導入可能量は岐阜県が全国の都道府県の中で最も多い。固定価格買取制度の導入量でも現時点で第3位になっている(図5)。さらに最近になって太陽光とバイオマスが増えてきた。特にバイオマス発電は都市部で先進的なプロジェクトが始まっている。

図5 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

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