タイはバイオ燃料に関連する大目標を2022年に達成しようとしている。例えば、2022年時点でバイオエタノールの消費量を現在の3倍に相当する9000kL/日に高める*2)。
*2) 同時に植物油などから生産したバイオディーゼルの消費量を6000kL/日とする。
タイが意欲的なのは先進的バイオ燃料(advanced biofuels)の生産目標量も定めたことだ。バイオエタノールの目標消費量の3倍近い2万5000kL/日とおいた。
先進的バイオ燃料とは、糖蜜やデンプンなど発酵しやすい物質からではなく、扱いにくいセルロースから作り出した燃料をいう。現時点で先進的バイオ燃料の商業生産を行っている国はない。製造コストが高すぎるからだ。
サトウキビから砂糖をとり出す際、糖蜜の他にもう1つ食品廃材が生じる。繊維質の「バガス」だ。バガスはセルロースに木質のリグニンが混ざったもの。このままでは発酵しないため、エタノールを取り出すことは難しい。バガスのうち60〜80%は精糖工場のボイラー燃料として利用しているものの、それ以外は廃棄されているという。
以上の2つの問題を解決する可能性をもつのが日本の技術だ。「サトウキビ由来のバガスを利用して、1L当たり18タイバーツでバイオエタノールを生産する技術を確立する」(新エネルギー・産業技術総合開発機構、NEDO)。数値目標を立てた2012年時点で49円/Lに相当する。生産規模が年産1万7000kLに達した時点で18タイバーツが実現可能になるという見込みだ。
NEDOは2015年8月31日、タイのサラブリ県に建設したバイオエタノール製造プラントの実証運転を開始したと発表した(図3)。予算規模は2012年度から2017年度までを合計して約12億円(うちNEDOが10億円)*3)。
「タイの主要な精糖企業であるThai Roong Ruang Energyのサラブリ精糖工場に隣接してプラントを立ち上げた。原料の入手には事欠かない」(NEDO)。300m2の敷地を利用し、バガスを年間1300トン処理する能力がある。
*3) 2014年1月にタイ側とMOU(覚え書き)を締結した。タイの政変などにより、建設開始以前に事業が1年半ほど停止したため、2014年から約1年強でプラントを建設したという。
NEDOは月島機械とJFEエンジニアリングに事業を委託。月島機械が設備を設計し、バイオエタノール製造に必要な技術を開発した。
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