電力を融通するマンション、エネファームで実現スマートシティ(2/2 ページ)

» 2015年09月10日 15時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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居住者は売買取引にかかわらない

 電力を互いに融通する場合、電力を供給する住居と供給を受ける住居がある。装置の起動・制御はもちろん、金銭のやりとりなどが煩雑になりそうだ。

 実際にはどちらも課題とはならないのだという。「エネファームの制御は2段階になっている。まずは戸建住宅に設置した場合と同様に、(あらかじめ貯湯するなど)個々の家庭の利用パターンを学習して戸別に制御する」(東レ建設)。

 マンション全体の電力を管理する方式は比較的単純だ。「マンション全体で不足する電力量を監視し、それを全戸の数で割る。その分だけ、各戸が余分に発電する」(同社)。例えばマンション全体で1万9000W不足した場合、各戸が追加発電する量は100Wとなる*3)

*3) このような制御方式を採ると、エネファーム全体の運転を最適化することはできない。例えば、既に発電能力が上限に達しているエネファームは指令を受け取っても対応できない。しかしながら、エネファーム同士を通信線で結んだり、エネファームごとに制御用ユニットを設置した場合と比較すると、導入がたやすい(低コスト)というメリットがある。

金銭のやりとりも発生しない

 シャリエ長泉グランマークスでは高圧一括受電を導入し、電力・ガスとも静岡ガス(グループ)が供給する。

 各住戸にはスマートメーターを設置し、そのデータをHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)やMEMS(マンションエネルギーマネジメントシステム)を通じて閲覧可能だ。電力、ガスの他、融通電力量も見える化する。

 月に1度届く「電気使用量のお知らせ」には、系統から購入した電力の他、融通した電力量と融通を受けた電力量も印字する予定だ。金銭のやりとりは静岡ガスとの間でのみ発生するため、マンション内で戸別のやりとりは起きない。

 T-グリッドシステムを実用化する際、融通電力の料金設定が難しいのだという。「シャリエ長泉グランマークスでは、東京電力の『従量電灯B』契約*4)と同じ料金を考えている。融通を受けるときは同契約と同等かそれ以下の価格、融通するときは、同じく同等かそれ以上の価格となる予定だ」(同社)。

*4) 従量電灯Bでは電力量料金が3段に分かれている。120kWhまで19.43円/kWh、300kWhまで25.91円/kWh、それを超えると29.93円/kWhとなる。

スマートマンションのとり組みも

 同マンションでは、T-グリッドシステム以外にも、スマートマンションらしいとり組みを進める。共用部で使う太陽光発電システム(20kW×2)と蓄電池システム(14.7kWh)だ。

 「通常時は蓄電池へ7.5〜8kWhを常に残すよう運転し、災害時に備える。太陽光発電から蓄電池への充電に対応しているため、災害時であっても共用部の照明や外光などに対応し続けることができる」(同社)。

 シャリエ長泉グランマークスはEAST棟とWEST棟に分かれており、この他、戸建10区画と公園を合わせて、「長泉エコライフタウン」を形作る。総面積は1万1417m2(図4)。

 戸建10区画は東レ建設が条件付きでハウスメーカーに売却する予定だ。条件とは、太陽光発電システムとエネファームを実装すること。ただし、「(法律上の制約があるため)マンション側と戸建側、戸建側同士でエネファームの電力を融通することはできない」(同社)。

図4 スマートタウン全体の敷地レイアウト
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