京セラは太陽光パネルやLED照明、蓄電池などのエネルギー関連機器や、ネットワークを通じてこれらをマネジメントするEMS、さらには発電設備の運用保守(O&M)など、既に幅広い領域でエネルギー関連事業を手掛けている。2016年度には新型の燃料電池の市場投入も予定している。同社がADRの技術開発に注力している背景には何があるのか。
その理由について京セラ エネルギーシステム研究開発部 草野吉雅氏は「既に展開している京セラのエネルギー関連ビジネスに、さらにADRのようなエネルギーのネットワーク化を実現するサービスを加えることで、京セラ独自の総合エネルギー管理システムを提供していきたいと考えている。OPEN ADR」と述べる。
同社ではこの総合エネルギー管理システムを「POM SYSTEM」(図5)と呼んでおり、太陽光発電設備の設置やO&Mから、データ分析、自動制御といった既に市場投入している製品やサービスに、さらにADRなどの付加価値サービスを加えて一括提案できるようにする狙いだ。国内のメガソーラー市場の成長鈍化が見込まれる中(関連記事)、ADRが普及すれば京セラの既存の顧客に対して付加価値を生むネットワークサービスを提供したり、ADRで利用できる蓄電池、太陽光パネル、HEMSといった関連製品の販売促進したりといった効果が見込める。
さらに2015年度からはこうした方針の基、再生可能エネルギーの導入拡大により電力網の安定化に向けてニーズが高まっている分散電源の双方向遠隔制御に関する技術開発にも取り組む方針だという。
ADRは現在まだ実証段階だが、実用化時期について草野氏は「早くともネガワット取引の市場が確立し始めるといわれている2017年ごろを目標にしている。多くの需要家と契約されている新電力(PPS)などに向けて、地域の電力需要を全体最適化できるようなサービスを安く提供していきたいと考えている」と述べている。
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