電力自由化は“バラ色の未来”をもたらすわけではない(後編)電力供給サービス(2/4 ページ)

» 2015年09月14日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

先行するドイツに見る右往左往

 再生可能エネルギーの活用において、理想像とされているのがドイツだといわれている。ドイツは電力自由化においても、日本に先行して既に発送伝分離まで実現しているが、その歴史は決して計画通りだったわけではない。

 藤田氏は「ドイツでは1998年に電力の小売自由化がはじまり、10あった電力会社が4社に統合される動きが生まれた。また新規電力販売会社として約100社が参入した。しかし、託送料の不公平な状況などが残っていたため2008年までの間に、新規電力販売会社は淘汰され、10社以下になってしまった」と新電力の動向について紹介する。

 一方でドイツにおいて再生可能エネルギー導入に大きな効果を発揮したFIT(Feed In Tariff、固定価格買取制度)は縮小が進んでおり、2017年には既存の電力料金との差額分に対して助成金を出す「Feed in Premium」方式への移行が進む。同様の動きは各国でも進んでおり、日本でもFIT頼みのビジネスモデルは早晩成り立たなくなることが想定できる(図3)。

photo 図3 ドイツの電力自由化の流れ(クリックで拡大)出典:シーメンス

電力の卸価格は下がり、小売料金は上がる、電力価格の問題

 さらに大きな問題が電力の価格だ。ドイツでは電力システム改革が始まった1998年から2014年の間に電力小売価格は70%上昇した。一方で、発電事業者もそれによって得をしているという状況ではなく、電力卸売価格は近年のピークである2008年から2012年にかけて60%下落している。つまり「儲からない発電事業者」と「損をする消費者」という誰も勝者にならない構図となっているのだ。

 藤田氏は「ドイツの場合、ここまで顕著に出ているのは、政府が再生可能エネルギーをエネルギーの中心に据えるということを明確にしたためであり、他の国では同様のことが起こるかどうかは分からない。しかし市場競争が生まれる以上、日本でもこのような結果が生まれることは十分あり得る。ドイツでは再生可能エネルギーを選ぶ国民から支持を得られたが同じことが日本でもできるかどうかは分からない。Win-Winの電力価格を実現する努力が必要だ」と指摘する(図4)。

photo 図4 ドイツの電力の卸売価格推移(左)と電力小売価格の推移(右)(クリックで拡大)出典:シーメンス

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