電力システム改革において、再生可能エネルギーの活用比率の拡大は期待されている領域ではあるが、特に日本の場合には発電コストが、現状の石炭火力やLNG火力に対して見合わないという課題もある。
例えば、陸上風力発電の場合ではグローバルの標準発電コストが5.7〜11.1円/kWh(キロワット時)であるのに対し、日本は15.6〜21.6円/kWhで1.5〜2倍程度になっている。一方で太陽光についてもグローバル標準コストの最安値が12.5円/kWhであるのに対し、21.0〜24.2円/kWhとなっており、高いことが分かる。LNG火力が13.7円/kWh、石炭火力が12.3円/kWhであることを見ると、グローバル標準発電コストにおける陸上風力発電は既に採算に見合う価格帯となっており、日本の発電コストが高いという現実が見えてくる(図5)。
「変動の大きな再生可能エネルギーの比率が高まれば送配電網が不安定になるため安定化のための対策が必要」ということはよくいわれているが、その対策として出力変動対応で期待されているのが、立ち上がりの早いガス火力である。再生可能エネルギーの拡大に政府が本気で取り組むのであれば、安定化に向けた電力キャパシティーの確保は必須の取り組みとなる。
しかし、その点で問題になるのが、ガス火力の採算性の問題だ。電力会社のエネルギーミックスに再生可能エネルギーを組み込むことになると、高コストで採算性の悪いガス火力は損益分岐点内から外れることになる。そのため使えば使うほど赤字となる発電方式となるため、電力会社が市場原理の影響を強く受けるほど「ガス火力は使わない」という選択になってしまう(図6)。
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