環境政策でリードするカリフォルニア州、抱える2つの課題に日本企業が挑むスマートシティ(1/2 ページ)

米国の中でも再生可能エネルギーやEVの導入を積極的に進めているのがカリフォルニア州だ。一方でEVの利用が都市部にとどまっていることや、再生可能エネルギーの導入拡大により電力網が不安定になるといった課題も抱えている。NEDOはこうした同州の課題解決に向け2つの実証事業に取り組む。

» 2015年09月15日 11時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、このほど米国カリフォルニア州の経済促進知事室と、同州内でスマートコミュニティ実証事業を実施することで合意し、基本協定を2件締結した。協定に基づき同州の北部都市圏で電気自動車(EV)の行動範囲拡大を目的とした実証事業を行う。さらにサンディエゴで蓄電池の普及展開に向けた送電・配電併用運転実証も実施する。

 米国は早くからEVに注目し、導入促進に向けさまざまな取り組みを実施してきた。カリフォルニア州は2025年までに150万台のZEV(Zero Emission Vehicle)普及を目標に掲げている。これに伴い同州内で自動車を一定台数以上販売するメーカーに対して、一定比率のEVやプラグインハイブリッド車の販売を義務付けている(ZEV規制)。さらにEV購入者は優先レーンの通行許可が得られるといった優遇措置も充実させ、現在全米で自家用EVの販売台数が最も多い州となっている。

 だがEVの利用は主に通勤や買い物など近距離移動に限られており、行動範囲は充電インフラが比較的整備された都市内に集中してしまっているというのが現状だという。利用が近距離移動に限られる大きな理由として、航続距離の制約というEV特有の心理的不安があり、これがEV普及の大きな足かせになっているとみられる。

 そこでNEDOはカリフォルニア州の北部都市圏で、スマートコミュニティの重要な構成要素であるEVの行動範囲拡大を目的とした実証事業を開始する。実証事業の委託先は日産自動車、Nissan North America、兼松の3社。実証事業では、同州政府とEV充電事業者「NRG EVgo」の協力を得て、充電インフラの導入が十分でない都市間をつなぐ幹線道路沿いに急速充電器を設置し、誘導サービスシステムなどを構築・提供してEVの行動範囲拡大に取り組む(図1)。

図1 EVの行動範囲拡大実証の事業イメージ 出典:NEDO

 これら取り組みによるEVユーザーの行動変化を分析することにより、都市間に設置する急速充電器や誘導サービスシステムなどが持つEVの行動範囲拡大への有効性を実証し、EVの普及・利用拡大モデルの確立を目指す。

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