汚泥をエネルギーとして活用するには、先述したように発生したメタンガスを燃焼してタービン回転させて電力を生む方法に加え、メタンガスから水素を取り出して利用するという方法もある。埼玉県はこの方法を利用して、下水処理場で汚泥由来のCO2フリーな水素製造にも取り組む。
メタンガスから取り出した水素は、下水処理場内に設置した水素ステーションから燃料電池車(FCV)や燃料電池で駆動する物流倉庫用のフォークリフトなどに供給していく計画だ。汚泥由来のバイオガス発電を行う4カ所の下水処理場に水素ステーションを設置する。
埼玉県はこの計画を2020年から開始する予定で、現在、中川水循環センターで事業化のモデル調査を実施している。下水処理場内への水素ステーションの設置や水素サプライチェーン構築に関する調査に加え、事業収支と実現化方策の検討を進めている段階だという(図3)。この調査の進捗(しんちょく)について上田知事は「基本的に実施可能だという方向性が見えてきている」と述べている。
埼玉県は2020年までに県内に水素ステーションを17基設置し、FCVを6000台普及させるという目標を掲げている。さらに2025年にはこれらをそれぞれ30基、6万台にまで拡大させる方針だ。2015年9月時点では、9基の水素ステーションが設置されている状況だ。
上田知事は今回発表した下水処理場に設置予定の4台の水素ステーションについては「2025年までに30基という計画に、さらに4カ所を加えるということも考えられる」としている。
「下水道処理場は全国各地に約2140カ所ある。今回の埼玉県の取り組みを全国に発信することで、全国に下水処理場にも水素ステーションを設置できるということアピールできるのではないか思っている。一般的には水素タンクは海岸部に設置されることが多いが、内陸部でもそういったことが可能になるということを埼玉県が先駆けて証明していきたいと考えている」(上田氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.