電力損失を減らす直流配電、普及に向け三菱電機が技術開発を加速蓄電・発電機器

発電した電力の多くは直流から交流に変換して一般家庭などに送電されている。しかし電気機器は直流電源を採用しているため再度変換する必要があり、この際に電力損失が発生している。三菱電機はこれを解決する直流配電技術の普及促進に向け、香川県丸亀市の受配電システム製作所の敷地内に「直流配電システム実証棟」を建設する。

» 2015年09月17日 15時00分 公開
[陰山遼将MONOist]

 三菱電機は受配電システム製作所(香川県丸亀市)の構内に、約5億円を投資して製品のショールームを兼ねた「中低圧直流配電システム実証棟」を建設する(図1)。

 中低圧直流配電システムはIEC60364(国際電気標準会議)が制定するDC1500V(ボルト)以下の電圧領域で、配電に伴う電力の損失を低減できるため、スマートコミュニティやスマートビル、鉄道分野などの環境配慮型電力需給システムでの採用が期待されている。

図1 「中低圧直流配電システム実証棟」の完成イメージ 出典:三菱電機

 受配電システム製作所は84kV(キロボルト)以下の受配電システムの一貫生産拠点で、工場・ビル・発電プラント、鉄道変電所などの受配電設備と、それらの制御・監視システムを生産している。同製作所の構内に建築面積約180平方メートル(延床面積約500平方メートル)、鉄骨造りで地上3階建ての実験棟を設けるもの。

 2015年9月に着工して完成は2016年3月を予定している。整流装置、太陽光発電、風力発電、蓄電池、EMS(エネルギーマネジメントシステム)、直流負荷設備などの機器を導入し、同年4月から順次稼働する予定だ。

 三菱電機が実証棟を建設する背景には、効率的な配電が行えることなどから普及拡大が期待される直流配電技術がある。このところCO2削減と安定した電力供給を目指し、太陽光・風力などの再生可能エネルギーと蓄電池の組み合わせによる環境配慮型電力需給システムを導入するケースが増えてきた。

 発電した直流電力は、電圧変更が容易な交流電力に変換して一般家庭などに送電される。しかし、使用されている電気機器の多くが直流であるため、交流電力から直流電力に再度変換する必要があり、変換の際には電力損失が生じる。この損失削減などを目的に直流配電に注目が集まっている。中低圧直流配電システムは、交流に変換する必要がなく、電力損失の低減に加えて配線ケーブルの細径化や長距離化ができるため、設備コストの低減が図れる。

 マイクログリッドや直流配電ビルなどの研究開発や実証が加速している中で、三菱電機は、データセンター向け直流給電システム「MELUPS DECO」や、鉄道架線(DC1500V)用直流高速度遮断器などの製品を市場投入してきた。今回の中低圧直流配電システム実証棟の建設により、同社は今後の直流配電技術の普及促進に向けた製品開発やエンジニアリング強化を図るために開発検証を加速する方針だ。

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