住民が復活させた鉄道、回生電力を電気自動車に供給してCO2削減電気自動車

福井県を走る「えちぜん鉄道」で回生電力を電気自動車に供給する調査が始まる。回生電力の発生量を測定して蓄電池の容量を検討する一方、駅に電気自動車を配置してカーシェアリングの導入効果を調査する。地域密着型の鉄道と電気自動車を組み合わせてCO2削減に取り組む。

» 2015年09月18日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 福井県の交通まちづくり課が9月19日(土)〜1月18日(月)までの4カ月間をかけて「鉄道エネルギー有効活用調査事業」を実施する。県内を走る「えちぜん鉄道」を利用して、電車がブレーキをかけた時に発生する回生電力を電気自動車に供給する仕組みと効果を検証することが目的だ(図1)。

図1 「鉄道エネルギー有効活用調査事業」の全体像。出典:福井県交通まちづくり課

 調査する項目は3つある(図2)。1つ目は電車から発生する回生電力量を測定して、電力を貯めるために必要な蓄電池の容量を検討する。2つ目は駅に電気自動車を配置して、カーシェアリングの利用動向を調べる。3つ目は鉄道とカーシェアリングの利用者に特典を付与して、観光の促進効果を検証することにしている。

図2 調査事業で取り組む3つの課題。出典:福井県交通まちづくり課

 電気自動車は県内で人気の「福井県立恐竜博物館」の最寄駅である勝山駅に1台を配置する。日産リーフに福井県の恐竜ブランドキャラクター「ジュラチック」のラッピングを施した「きょうりゅう電気自動車」で利用を促進する狙いだ(図3)。利用料は3時間で2500円に設定して、鉄道の利用者には300円を割り引く。

図3 カーシェアリングに使用する「きょうりゅう電気自動車」。出典:福井県交通まちづくり課

 えちぜん鉄道は全43駅のうち20駅でパーク&ライドを実施している(図4)。駅前に無料の駐車場を用意して、鉄道と自動車の併用によるCO2(二酸化炭素)排出量の削減を推進中だ。新たに調査事業の結果をもとに鉄道とカーシェアリングを組み合わせた「レール&ドライブ」の導入を検討する。沿線には「永平寺」や「東尋坊」など全国に知られる観光の名所があり、レール&ドライブのニーズは十分に見込める。

図4 パーク&ライド実施駅(あわら湯のまち駅だけ1日200円)。出典:えちぜん鉄道

 えちぜん鉄道は2003年に復活したローカル鉄道で、それ以前の2年間は電車の運行を停止していた経緯がある。前身の鉄道事業者が2度の事故を起こして廃線に追い込まれたが、沿線の住民が出資する第三セクター方式で2つの路線を復活させた(図5)。全体の半分以上の27駅を無人で運営するなどコストを削減して運賃を値下げする一方、駅前に無料の駐車場やレンタサイクルを用意して利便性の向上に取り組んでいる。

図5 「えちぜん鉄道」の路線。出典:えちぜん鉄道

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