太陽光と風力と工場が集まる半島、電力の自給率300%を超えるエネルギー列島2015年版(23)愛知(2/3 ページ)

» 2015年09月24日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

工場の構内でも太陽光と風力発電

 製鉄会社の工場にも太陽光と風力の発電設備が広がっていく。全体で100万平方メートルに及ぶ構内に残っていた20万平方メートルの空き地を利用して、発電能力が15MWのメガソーラーを建設中だ(図4)。2016年の夏に運転を開始する予定で、年間に1500万kWhの電力を供給することができる。これで4000世帯分の電力が増える。

図4 東京製鉄の田原工場に建設中のメガソーラー完成イメージ(右下の青い部分)。出典:シーエナジー

 発電事業者は中部電力グループのシーエナジーで、中部電力に売電してCO2排出量の低減に役立てる。近くで運転中の「たはらソーラー・ウインド発電所」と「たはらソーラー第一・第二発電所」のプロジェクトには、同じ中部電力グループのシーテックが中核の事業者として参画している。

 この東京製鉄の工場の構内では風力発電所が稼働中だ。海側に3基の大型風車が並んで、合計6MWの発電能力がある(図5)。関西電力グループの関電エネルギーソリューションが東京製鉄から用地を借り受けて、2014年5月に運転を開始した。年間の発電量は1400万kWhを見込んでいて、3900世帯分の電力になる。売電先は中部電力である。

図5 東京製鉄の田原工場で運転中の「田原4区風力発電所」の位置と全景。出典:関西電力、関電エネルギーソリューション

 渥美半島のほぼ全域を占める田原市では沿岸部の年間平均風速が毎秒6.5メートルになり、丘陵の頂上付近では毎秒8メートルを超える。沿岸部にある田原4区風力発電所の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は27%に達する見込みで、風力発電の標準値である20%を大きく上回る。

図6 「田原臨海風力発電所」の全景。出典:田原市環境部

 恵まれた風況を利用して、トヨタ自動車の工場の中でも10年前の2005年から大規模な風力発電所が運転を続けている。構内の海側に11基の大型風車を配置した「田原臨海風力発電所」である(図6)。トヨタグループの豊田通商とJ-POWER(電源開発)の共同事業として始まり、現在はJ-POWERが100%出資するジェイウインド田原が運営している。

 発電能力は22MWもあり、年間の発電量は4000万kWhにのぼる。愛知県で最大の風力発電所で、1万1000世帯分の電力を供給する。これを含めて市内で稼働中の太陽光と風力の発電所を合計すると、田原市の再生可能エネルギーによる電力自給率は300%を超える。

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