最悪の発電コスト、日本に未来はあるのか電力供給サービス(3/5 ページ)

» 2015年09月30日 13時30分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

再生エネでは陸上風力が有利

 大規模に実用化されている再生可能エネルギーのLCOEを示したものが図4だ。どの技術についても最大値と最小値の差が大きいことが分かる。つまり、国や地域によって最適な技術が異なることを意味している。

 報告書が特に強調しているのは発電コストが最大値にあるとき、ベースロード電源と比較して明らかに高コストであること。加えて、最小値の場合はベースロードを一部下回ることだ。特に水色で示した陸上風力が一貫して低コストだ。割引率3%の場合、米国の32.71米ドル/MWhから、日本の134.56米ドル/MWhの範囲にある。

 これに商業規模の太陽光と大規模太陽光が続く。洋上風力は住宅用太陽光と同程度だ。いずれも割引率に強い影響を受けている。

図4 主要な再生可能エネルギーによる発電コスト(LCOE) 出典:IEA

進歩が著しい再生可能エネルギー

 報告書では再生可能エネルギーの劇的な低コスト傾向についても触れている。

 図5はガス火力、石炭火力、原子力のLCOEを5年前の報告書と比較したもの。中央値はいずれも上昇しており、低コスト化へ向かう動きが現れていない*5)。それでも上昇率がわずかであるため、報告書では、「コスト上昇が止まった」と指摘。原子力のコスト上昇が続いているという神話を切り崩す結論が得られたとしている。

*5) 図5、図6とも割引率は10%。EGC 2010の値は2013年の米ドル価値に換算している。

図5 発電コスト(LCOE)の変化(ガス火力、石炭火力、原子力) 出典:IEA

 再生可能エネルギーは対照的な動きを示している(図6)。陸上風力(水色)はもちろん、太陽光(全規模)の低コスト化は著しい。5年間で一気に風力に追い付く勢いがある。報告書では5年前(データ数17)よりも太陽光のデータ数が増えているにもかかわらず、分散が小さくなっていることを指摘。本質的な変化が生じたとしている。

図6 主要な再生可能エネルギーによる発電コスト(LCOE)の変化 出典:IEA

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