下水処理場が市の新財源に早変わり、消化ガスから300世帯分の電力自然エネルギー

茨城県守谷市にある「守谷浄化センター」で消化ガスを利用したバイオガス発電事業が始まった。年間発電量は一般家庭300世帯分に相当する140万kWhを見込んでいる。同事業は自治体と発電事業者の双方にメリットがあるBOO方式を採用しているのが特徴だ。

» 2015年10月06日 13時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 茨城県守谷市で下水処理場で発生する消化ガスを利用したバイオガス発電事業がスタートした。同事業は民間企業の資金と技術を活用して、自治体側の負担が少ないPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)方式の1つであるBOO(民設民営)方式を採用。発電設備の設置と運営は総合水道事業を手掛ける水ing(スイング)が行っている。2015年10月1日より水ingが「守谷浄化センター」に設置した発電所「守谷バイオガスパワー」が発電を開始した(図1)。

図1 発電を開始した「守谷バイオガスパワー」の外観 出典:水ing

 下水処理の過程では副産物として多くのガスが発生する。これは汚泥の有機物が分解したもので、消化ガスと呼ばれる。消化ガスは主にメタンやCO2などで構成されており、可燃性だ。そのため下水処理の過程で加熱が必要な部分で利用する場合もあるが、全てを活用せずに廃棄してしまうことも多い。今回のバイオガス発電事業は、こうした未利用消化ガスの活用を目的としている。

 BOO方式を採用する今回の事業スキームを図2に示す。守谷市は守谷浄化センターで発生する消化ガスを水ingに売却し、さらに発電所を建設する土地を貸し出す。契約期間は20年間。水ingは買い取った消化ガスを利用して発電を行い、固定価格買取制度(FIT)を利用して電力会社に売電するという構図だ。

図2 事業スキームの概要 出典:守谷市

 守谷市が水ingに売却する消化ガスの量は年間76万Nm3(ノルマルリューベ)。これらの売却額と土地貸付料を合計すると年間400万円の収益となり、20年間では合計8000万円を得られる計算になる。発電設備の設置や運営に掛かる費用は水ing側が負担する。守谷市は事業負担を負わず、同時に未利用の消化ガスを活用した新たな収益源を創出できる。これが民設民営のBOO方式のメリットだ。

 守谷バイオガスパワーの発電量量は175kW(キロワット)で、年間発電量は一般家庭300世帯分に相当する140万kWh(キロワット時)を見込んでいる。水ingはFITを利用してこの電力を1kWh当たり39円で売電する計画だ。ここから守谷市から購入する消化ガスや土地貸付料、運営費などを差し引いた額が水ing側の収益となる。一部の消化ガスは浄化センター内にある消化槽で利用する温水を作るための燃料としても活用する。

 水ingは今回と同じBOO方式で、下水処理場で発生する消化ガスを利用した発電事業を山形県鶴岡市でも行っている(関連記事)。

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