電力システムにおけるリスク分析の方法論「電力」に迫るサイバーテロの危機(4)(2/3 ページ)

» 2015年10月07日 09時00分 公開
[佐々木 弘志 / マカフィースマートジャパン]

2.リスクアセスメントの実施

 このフェーズでは、1のユースケースシナリオの分析をもとに、スマートグリッドにおけるシステムの脆弱性の検討、リスクの影響度について検討する。

 NIST IR 7628では、リスクアセスメントを実施するための対象システムを22個のカテゴリに分類している。その分類方法は、まず、スマートグリッドにおいてセキュリティ対策を考慮すべき構成要素(事業体を含む)を洗い出し、その要素間の論理的な通信(やりとり)についても洗い出して、大きな全体像を形成する(図1)。

photo 図1 スマートグリッドを形成する全ての要素と要素間のインタフェース(クリックで拡大)※出典:NIST IR 7628 rev.1

 その後、セキュリティ要件を決める上で似たインタフェースを持つものを分類して同じカテゴリに集約している。例えば、論理インタフェースカテゴリNo.18「メータリング装置間のインタフェース」(図2)は、メータリングに関する事業体、装置について、サブメーターとメーター間、PEV(プラグインハイブリッド車)メーターとエネルギーサービス事業者間における通信のリスクを分析するためのカテゴリであり、全体の構成図からメータリング装置のインタフェースに関わる部分が抽出されている。

photo 図2 図1からNo.18「メータリング装置間のインタフェース」に関わる部分を抽出(網掛け部分)を抽出したもの(クリックで拡大)※出典:NIST IR 7628 rev.1

 これらの22個のカテゴリについて、図3に示したように、機密性、完全性、可用性に関するリスク分析が行われている。例えば、No.18の例では、メータリングに関する内容なので、先のAMIのユースケース分析でもあったように、完全性が「H」と最重視されており、機密性が「M」、可用性が「L」と定義されている(図3)。

photo 図3 22の論理インタフェースカテゴリにおけるC-I-Aにおけるリスク分析(表の列は左から順に、Confidentiality:機密性、Integrity:完全性、Availability:可用性。リスクレベルの定義は、L:限定的、M:重大、H:深刻)出典:NIST IR 7628 rev.1 (※)初版と分析結果が異なることに注意

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