家庭や企業に設置したスマートメーターから収集する電力使用量のデータは膨大だ。30分単位のデータをすべて分析して、料金メニューの開発や需要予測に生かすシステムの開発が進んできた。420万台のスマートメーターから集めた3年分のデータを70分で分析できるシステムの製品化が近い。
スマートメーターが計測する電力使用量は30分単位のデータにまとめられて、電力会社から小売電気事業者にも提供することになっている。1台のスマートメーターで1年間に1万7520回(1日48回×365日)にのぼる電力使用量のデータが積み上がる。この大量のデータを数多くの家庭や企業から収集して分析を加えると、電力の利用動向や将来の需要見込みを高い精度で把握できるようになる。
IT(情報技術)による「ビッグデータ分析」を電力の分野に適用する試みが活発になってきた。ITシステム開発大手の伊藤忠テクノソリューションズ(略称CTC)は420万台のスマートメーターから収集した3年分のデータを使って、需要予測などを高速に実行できるシステムの性能評価を実施した(図1)。
その結果、420万件の利用者すべてを20種類のパターンに分類する処理が70分で完了した。「通常のシステムでは数日間かかるような処理が1時間程度で済むため、条件を変えながら頻繁に分析することが可能になる」(性能評価を担当したCTCのビジネス企画課エグゼクティブエンジニアの青木健氏)。
すでに欧米では小売電気事業者がスマートメーターのデータを分析して料金メニューを開発する取り組みが進んでいる。地域や家族構成などによって月ごと・曜日ごとの利用パターンを類型化することで、最適な料金メニューを開発して顧客の獲得に生かすことができる。
日本国内でも2016年4月から家庭を含めて電力小売の全面自由化が始まると、同様の販売手法が求められるようになる。CTCは性能評価を実施したシステムを3月までに製品化して、電力会社や新電力を対象に販売する予定だ。
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