世界の空調機器市場を舞台に、日本メーカーの主導権争いが白熱省エネ機器(2/3 ページ)

» 2015年10月14日 15時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

UTCと提携を進める東芝

 今回の日立をはじめ、空調事業を抱える国内大手電機メーカーが欧米の企業と連携や子会社化するケースがこのところ相次いでいる。

 東芝は2014年10月に米国のビルソリューションや産業システムを手掛ける大手メーカーであるユナイテッドテクノロジーズ社(United Technologies、以下UTC)と業務用空調事業における戦略的提携について合意した。東芝とUTC傘下のキヤリア社が出資する空調メーカーの東芝キヤリア(TCC)は業務用空調システムを中心に提携後10年間で、年間売上高を16億ドルから倍増させることを目指す。

 TCCは1999年に東芝の空調・設備事業部とキヤリア社の合弁会社により設立された。数年前から業務用空調事業を強化する戦略を取り、VRFや空冷ヒートポンプ式熱源機などで高性能の商品を投入し、それぞれの分野で最適な温度を提供する「ヒートポンプソリューションカンパニー」としての企業価値を高めてきた。

 今後、UTCとの戦略的提携により、海外でのエンジニアリング・営業資源の投入を推進。インドや北米での製造拠点設立も検討している。さらにTCCの欧米市場向け販売、エンジニアリング、ローカル商品開発を強化するため、同地域にエンジニアリングセンターの設立も予定するなど一層グローバル展開を加速させる方針だ。

デルクリマを買収した三菱電機

 空調業界で国内第2位の売上高を誇る三菱電機は2015年8月、イタリアの業務用空調会社のデルクリマ(DeLclima)の株式を取得(買い取り総額は約900億円))し、子会社化することを発表した。デルクリマ社の売上高は348万ユーロ(2014年実績、約480億円)で、傘下には欧州第3位のチラー(大型施設用途向けの空調機器)メーカー、クリマべネタ(Climaveneta)やデーターセンター向け空調メーカーのRCグループを保有している。

 三菱電機はデルクリマ社を子会社化することで、欧州市場で根強い需要があるチラーを中心に大型業務用製品のラインアップを拡大。同社の主力であるRAC、PAC、VRFなどと併せて家庭用から大型業務用までの総合的な空調冷熱システムの提供し、欧州でナンバーワンの空調メーカーを目指す。また、欧州の環境規制(F-GAS規格)への対応も推進。さらにデルクリマ社の遠隔監視あどのシステムソリューション力を生かしたソリューション型事業を推し進め、中国、中東、インドをはじめとしたデルクリマの海外拠点を活用したグローバル展開の強化を進めていく。両社のシナジーを出すことでさらなる競争力の向上を図っていく方針だ。

 三菱電機の空調・冷熱システム事業は2013年度に売上高が6000億円を突破。2014年度も堅調に推移し、2015年度は7200億円を目指している。国内の売上高は約4割で、欧州はそれに続く2割を占めている。欧州市場ではこれまでも2014年7月にトルコの代理店クリマプラス(Klima Plus)を買収・統合。2014年10月にロシアで現地法人の営業を開始している。2015年7月にはノルウェーで代理店を買収し、2015年10月からは新支店として営業を開始する。さらに欧州以外の中国、東南アジア、北米などの地域でも現地生産体制を構築するなど、グローバル生産・供給拠点の整備を進めている。同社ではこうした海外市場での積極的な取り組みで「年率5%以上の成長」という目標を掲げた。順調に推移すれば同事業の売り上げは2020年には1兆円という数字も見えてくる。

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