環境問題への取り組みは“動いていない自動車”に価値を与えるスマートシティ(1/2 ページ)

2年に1度の自動車産業の展示会「東京モーターショー2015」において「自動車はモビリティではなく既に社会インフラになりつつある」と日本自動車工業会会長の池史彦氏は強調する。

» 2015年10月30日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 東京モーターショーのプレスデー2日目となる2015年10月29日に開催された、自動車メーカートップが自動車産業の未来を語るプレスイベント「Mobilityscape Tokyo 2015」では、各社のトップが「環境」と「安全」への取り組みの価値を訴えるとともに、これらに貢献するために、自動車の「電動化」と「知能化」を進めていくと口をそろえた(図1)。

photo 図1 「Mobilityscape Tokyo 2015」の様子。自動車メーカー5社のトップがそろい踏みした(クリックで拡大)

 日本自動車工業会 会長であり、本田技研工業(以下、ホンダ)の代表取締役会長を務める池史彦氏は「自動車産業は人々を豊かにしているが、問題が残されている」と述べ、2つの課題を指摘した。

 1つは、気候変動への影響の問題だ。「持続可能な社会を実現するためには2050年までの気候変動を2度に抑えなければならないが、現在のままの生活を続ければ気温は8度上昇する。気候変動を抑えるためにはCO2の排出量を7割削減しなければならない。多くのCO2排出の原因となっている自動車産業はここに貢献していかなければならない」と池氏は述べている。

 もう1つは安全の問題だ。自動車の普及は先進国では成熟してきているが、新興国では大幅に勢いで成長を続けている。その一方で、道路インフラの問題などもあり、渋滞や事故などの問題が、各地で社会問題化している。これらを解決するため自動車を高度化していかなければならないというわけだ。

「人を運ばない」時の自動車の価値

photo 日本自動車工業会 会長 池史彦氏(ホンダ 代表取締役会長)

 特に「環境」の領域では、従来の「人を運ぶ」という自動車としての役割以外の新たな価値を自動車が担えるようになる。そのポイントとなるのが「電動化」である。自動車を内燃機関で駆動させるのでなく、電力で駆動するようになり、その電力を蓄電池や燃料電池で蓄える形にできれば、自動車は人を運ぶだけでなく移動可能なエネルギー源として利用可能となるからだ。従来は役立っていなかった「移動しない時」についても、電源としての役割を担えるようになる。

 そのためには、自動車を単純なモビリティとして捉えるのではなく、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の一部として捉え、社会インフラとして新たな役割を追求していく必要がある。「エネルギーの供給源として自動車と家庭を結ぶV2H(Vehicle to Home)やV2C(Vehicle to Community)など、さまざまな価値が生まれている」と池氏は述べる。また、これらを実現するためには「自動車として個社での競争は当然するが、環境や自動運転など社会インフラとして成立させなければいけない領域については、協調が大事になる」と語る。

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