関西に流れる電力を風力発電で増やす、騒音対策が農山村の課題エネルギー列島2015年版(30)和歌山(2/3 ページ)

» 2015年11月10日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

新たに13基の大型風車を建設

 広川明神山風力発電所のすぐ西側では、「由良(ゆら)風力発電所」が2011年から運転を続けている(図4)。発電能力が2MWの大型風車5基で構成して、10MWの電力を供給することができる。もともとは風力発電専門会社の日本風力開発が建設した発電設備だが、稼働直前に大阪ガスグループが買い取った。

図4 「由良風力発電所」の全景(上)と所在地(下)。出典:大阪ガス

 さらに大阪ガスグループは2015年9月にも、三井造船が開発を進めてきた「印南(いなみ)風力発電所」の事業を引き受けている。広川町から南へ25キロメートルほどの山中に、2MWの大型風車13基を建設して2018年に運転を開始する計画だ(図5)。

図5 「印南風力発電所」の建設予定地(上)と風車の配置計画(下)。出典:大阪ガス、三井造船

 建設予定地になっている印南町は温暖な気候を生かして梅やスイカの栽培が盛んなところである。これまで風力発電所が建設されたことはなく、地元の住民からは騒音被害や農作物に対する懸念の声も上がった。約4年間に及ぶ環境影響評価の手続きを通じて、地元や環境省の意見を反映した対策を実施することで建設が認められた。

 和歌山県内では関西電力が2012年に南部の白浜町に大型風車3基で構成する風力発電所の建設を計画したが、住民から強い反対運動が起こって断念した経緯がある。関西では原子力発電の是非を問う声も根強いが、環境保護の点で風力発電の導入にも慎重さが求められる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.