150度の高温で利用可能な全固体リチウム二次電池、基礎技術を開発蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2015年11月16日 11時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]
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複合正極層と剥離抑制接合層

 内部抵抗の低減に成功した技術は主に2つの点による。1つ目は、正極材料の分解を抑制する複合正極層材料だ。従来、正極材料がLiBH4系錯体水素化物と接触すると分解反応が生じ、リチウムイオン伝導が阻害されるという課題があった。これを解決するため、酸化物固体材料(Li-B-Ti-O)を開発し、正極材料とLi-B-Ti-O材料で構成される複合正極層を作った。これにより、正極材料を保護し、分解によって増大する抵抗を抑制することができた結果、ほぼ0であった放電容量を理論容量の50%に改善することを可能とした。

 2つ目が、固体電解質と複合正極層間の界面での抵抗を低減する剥離抑制接合層技術である。複合正極層の開発により、放電容量は理論容量の50%まで向上させることができたが、それ以上の改善は難しい状況だった。これは、充放電に伴い正極材料の体積が変化することで、複合正極層と固体電解質層間に剥離が生じ、界面抵抗が増えたことによるもの。そこで、剥離抑制接合層として低融点アミド添加錯体水素化物電解質を開発し、両層の間に配置した。これにより、全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗を約100分の1に低減した。

 さらに、複合正極層技術と剥離抑制接合層技術により、放電容量が理論容量の90%にまで拡大(図2)。繰り返しの充放電に伴う電池容量低下も大きく改善し、安定した充放電が可能となることを実証した。

photo 図2 150度環境の放電曲線 出典:日立製作所

 本技術により、エンジンルームに搭載する自動車用の電源や大型産業機械に搭載するモータ用の電源、滅菌加熱が必要とされる医療用機器電源など、高温環境下での電池使用を可能とする。また、従来のリチウムイオン二次電池が必要としていた冷却機構が不要となることにより、電池システムの小型化とコスト低減が期待できる。

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