走る水素ステーションが神奈川へ、遅れる普及に現実解としての「移動式」蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2015年11月17日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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普及への“現実解”として期待される「移動式ステーション」

 2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」に向け、水素社会の実現に向けた取り組みが加速している。既にFCVやFCバスなどの水素で駆動するモビリティが公道で走りはじめる一方、その普及を支えるインフラである水素ステーションの整備は遅れ気味だ。政府のロードマップでは2015年内に100カ所程度を整備する計画を掲げているが、実際に開所するのは2016年度末で80カ所強という見込みだ(関連記事)。

 水素ステーションの普及が遅れる要因の1つに、設置コストの高さがある。一般的なガソリンスタンドのような定置式の水素ステーションの場合、設置コストは約5〜6億円だ。しかし今回JX日鉱日石エネルギーが展開するような移動式の水素ステーションであれば、設置コストを約半分まで下げられる。そこで水素ステーションの普及促進に向け、移動式ステーションの導入に注目が集まっている。

 移動式は水素ステーションのもう1つの課題である収益面の課題にも対応しやすい。現状ではFCVの普及台数が少ないため、水素ステーションを設置しても稼働率が低く、運営事業者は収益確保に苦戦することが多い。しかし移動式であれば必要な場所に必要な量の水素を届けやすく、さらに定置式と比較して必要な設置面積も抑えられるため、高圧ガス保安法における距離規制もクリアしやすい。

 規制緩和なども含めた設置コストの低減やFCVの普及が進むまでの間、水素ステーションの普及促進に向けて移動式ステーションの採用が現実解として進んでいく可能性は高い。今回の神奈川県の事例で利用するのは2台の移動式ステーションだが、“水素ステーションの設置場所”としては新たに3カ所がオープンしたとカウントすることもできる。

リース手法の活用事例も登場

 移動式水素ステーションは、豊田通商と岩谷産業、大陽日酸の3社が共同設立した日本移動式水素ステーションサービスが、2015年3月から東京都内で日本初の商用サービスとして導入を開始した。以降、愛知県や福岡県でも導入が始まっている(関連記事)。

 日本移動式水素ステーションサービスは、三井住友ファイナンス&リースのリースを活用して運営資金を調達しているが、三井住友ファイナンス&リースは2016年3月末から、埼玉県向けに水素ステーションのリース事業も開始する。メガソーラーでも活用事例があるように、こうしたリース手法の導入も水素ステーションの普及促進に向けた手段の1つになるだろう。

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