またも石炭火力発電に環境省が反対、関西電力グループが計画する2カ所法制度・規制(2/2 ページ)

» 2015年11月17日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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電力業界のCO2削減計画は不十分

 まもなく電力の小売全面自由化が始まり、発電事業と小売事業の双方で価格競争が激しくなっていく。石炭火力はLNG(液化天然ガス)や石油と比べて発電コストが圧倒的に低いことから、新設する火力発電所は燃料に石炭を利用するケースが多い。ただし石炭火力はCO2の排出量がLNG火力の2倍以上にもなるため、規制を設けないと国の長期目標の達成が困難になる

 経済産業省は2030年のエネルギーミックス(電源構成)を決めるにあたって、発電に伴うCO2排出量を2030年度までに2013年度比で34%削減する目標を設定した(図4)。これを受けて環境省は電力業界全体で排出量の削減に取り組むための「枠組み」を早急に構築するように再三にわたって要求している。

図4 エネルギーの生産・消費に伴うCO2排出量の実績と目標(左)、そのうち電力によるCO2排出量(右)。単位:億トン。出典:経済産業省

 電力会社を中心とする23社は2020年度までにCO2排出量を年間700万トン削減する目標を9月末に発表して、改善に取り組む姿勢を示した。ところが環境省は改めて2件の石炭火力発電所の新設計画に対する意見の中で「実効性の観点から詰めるべき課題がある」と指摘して、具体的な削減策のとりまとめを急がせる方針だ。

 環境省が求めるCO2排出量の削減策の対象は新設する石炭火力発電所だけでは不十分で、既存の石炭火力発電所を含めなければ実効性は伴わない。電力会社を中心に老朽化した石炭・石油火力発電所の廃止は避けられないが、各社の経営に大きな影響を与えるため自主的には決めにくい。所管の経済産業省が各社に目標値を割り当てて、2030年度までの実行計画を策定する以外に方法は見あたらない。

 すでに環境省は愛知県と山口県で進んでいる2件の石炭火力発電プロジェクトにも難色を示している。中部電力による「武豊火力発電所」の設備更新計画と、J-POWER(電源開発)や大阪ガスが推進する「西沖の山発電所(仮称)」の新設計画である(図5)。

図5 「西沖の山発電所(仮称)」の環境影響評価の進捗状況。「方法書」を2015年11月10日に送付済み。出典:山口宇部パワー

 2件ともに環境影響評価の第1段階で環境省が「是認できない」と意見を出した。それでも各事業者は10月中旬から11月上旬にかけて第2段階の「方法書」を提出して手続きを進めている。電力業界が9月末にCO2排出量の削減目標を示したことで、環境省の理解を得られるものと判断したようだ。

 それでも環境省は11月13日に新たなプロジェクトに対して同様の意見を出した。先行して進んでいるプロジェクトにも影響が及ぶことは必至だ。第2段階の方法書についても環境省は意見を出す権限があり、その内容は計画初期の第1段階よりも重みがある。環境省が石炭火力発電の規制に強い態度で臨む姿勢を示したことから、経済産業省と電力業界は早急に改善策を提示しないと将来の電源確保が難しくなりかねない。

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