ユニリーバは、なぜ全ての電力を再生可能エネルギーで賄うのか自然エネルギー(1/3 ページ)

ユニリーバはグローバルで2030年までに世界中の全ての事業所で使用する電力を再生可能エネルギーに切り替え「カーボンポジティブ」とする。既に世界に先駆けて日本法人では全事業所で使用する電力を100%再生可能エネルギー化した。なぜ、ここまで積極的に再生可能エネルギーの採用に踏み切るのか。ユニリーバ・ジャパンで開催されたパネルディスカッションの様子をお伝えする。

» 2015年12月04日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 ユニリーバは英国に本社を置く家庭用消耗品のグローバル企業である。約190カ国で400以上の製品ブランドを展開し、総売上高は約6兆2000億円、社員数は17万人を誇る大企業である。毎日20億人の人が世界中で同社の製品を使用しているという。

photo ユニリーバ・ジャパン代表取締役社長兼CEO フルヴィオ・グアルネリ氏

 ユニリーバの創業は石けんから始まったという。当時の英国は衛生状態が悪く、こうした社会課題に向き合うことから事業が生まれたのだという。「その理念は今も変わらない」とユニリーバ・ジャパン代表取締役社長兼CEO フルヴィオ・グアルネリ(Fulvio Guarneri)氏は話す。そして今向き合っている社会課題の1つが気候変動の問題である。

 ユニリーバでは2010年に「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を発表。環境負荷を減らしながら、ビジネス規模を2倍にする目標に取り組んできた。その中で2020年までに10億人に衛生的で健康的な暮らしを送れるように支援していくことや、2020年までに環境負荷を半減させること、製品の原材料として使用する農産物を100%持続可能な調達とすることなどを定めている。

2030年までに全世界の事業所を100%再生可能エネルギーで運営

 今回はその目標をさらに高めるために2030年までに、同社が生み出すCO2排出量を吸収量が上回る「カーボンポジティブ」の実現を目指すという。そのため世界中の全ての事業所で使用する電力についても2030年までに100%再生可能エネルギーにすることを目指す。また2020年までに電力系統から購入する電力を全て再生可能エネルギーに切り替える他、自社のエネルギーミックスから石炭を排除するという。

 これらをユニリーバ社内でいち早く実現したのがユニリーバの日本法人であるユニリーバ・ジャパンである。ユニリーバ・ジャパンは、日本自然エネルギーとグリーン電力証書システムの導入に関する契約を締結し2015年11月1日から日本国内の全事業所で使用する年間約551万kWh(キロワット時)分の電力をグリーン電力証書を利用して100%再生可能エネルギーに切り替えた。

 グリーン電力証書システムとは、風力、太陽光、バイオマス(生物資源)などの再生可能エネルギーにより発電された電気の「環境付加価値」を、証書発行事業者が第三者機関の認証を得て、「グリーン電力証書」という形で取引する仕組み。これにより、直接発電設備を導入しなくても、再生可能エネルギーの普及に貢献でき、証書に記載された電力量相当分のグリーン電力を利用したと見なされることが特徴となる。

 さて、ユニリーバはなぜ再生可能エネルギーの使用率100%を目指したのだろうか。次ページからは、再生可能エネルギーを取り巻く世界の状況を踏まえつつ、企業が再生可能エネルギーを採用すべき理由について紹介する。

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