灰色・半透明の太陽電池、ビル壁面で効率5%超蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2015年12月15日 11時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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ゼロエネルギービル実現に必要

 MerckやBELECTRIC OPVが有機薄膜太陽電池の開発を急ぐ理由は、市場拡大を見込んでいるからだという。

 欧州連合(EU)は、2020年末時点で新築のビルが備えるエネルギー基準の目標を「建物のエネルギー性能に関する欧州指令(EPBD:Energy Performance of Buildings Directive)」という要求にまとめている。EPBDでは、ビルのエネルギー性能としてNZEB(Nearly Zero-Energy Buildings)の実現を求めた*4)。ZEBの前に「N」を付けた理由は、ビルと近隣のエネルギー生産設備を合わせてZEBにするという考え方だからだ。

 EUがこのような指令を出した背景には、全エネルギー消費量の40%、全二酸化炭素排出量の36%をビルが占めている状況がある。

 Merckによれば、ビルの消費エネルギーを引き下げるため、建物の外面に取り付ける受動的な材料(太陽熱利用など)はこれ以上性能を高めることが難しい。そこで、有機薄膜太陽電池などの能動的な建築部材が必要だとした。

*4) 高いエネルギー性能を有すること、必要とするエネルギー消費量が極めて少ないこと、再生可能エネルギーを建物内または近隣からから調達しなければならないことなどを定めている。なお、官公庁の関連ビルは2018年末までに達成する必要がある。

シリコンではなく有機薄膜が必要

 BELECTRIC OPVは、ドイツBundesverband Bausysteme(Federal Association Construction System)の専門家の研究を引いて、ドイツ単独でもビルの壁面を利用すれば3000平方キロメートルもの設置面積が得られると指摘した*5)。この壁面にどのような太陽電池を設置すればよいのか。

 Merckはシリコン太陽電池などと比較した有機薄膜太陽電池のメリットを挙げている。シリコン太陽電池は光の照射角が低い場合に効率が落ちる。ビル壁面は必ずしも南向きではない。設置角度を例えば30度にそろえると外観を損なう場合もある。

 シリコン太陽電池には他にも弱点がある。散乱光の利用効率が低く、太陽電池表面の温度が上がると変換効率が下がる。ビル正面のファサードに太陽電池を設置しようとすると、これらの弱点が響く。

 有機薄膜太陽電池では、以上のような弱点が、弱点にはならないのだという。例えば光の照射角が浅くても効率があまり変わらない。

 半透明化が容易で、軽く、形状やデザインを変えやすい。さらに今回のように色の調整が可能であること。発電性能に加えて、このような性質がBIPV用の太陽電池として必要なのだという。

*5) 計算上はピーク出力が300ギガワットとなり、ドイツの電力需要量の50%をまかなうことができる。

【更新情報】 記事公開後、1ページ目の冒頭に注を3点追加しました(2015年12月15日)。



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