石炭火力発電のコスト削減とCO2回収を急げ、日本の威信をかけた実証プロジェクト蓄電・発電機器(2/3 ページ)

» 2015年12月24日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

CO2排出量を15%削減できるIGCC

 大崎クールジェンプロジェクトで採用した「酸素吹きIGCC」は、従来の「空気吹きIGCC」と比べて利用できる石炭の種類が多く、運転コストを引き下げるメリットがある。ただし空気から酸素を分離する設備が必要で、建設コストの高さが課題になっている(図3)。日本政府は国内外に酸素吹きIGCCを普及させるために、2018年度には商用化の技術を確立したい考えだ。

図3 実証試験設備の全体構成。出典:大崎クールジェン

 現在の石炭火力発電の商用機では「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」と呼ぶ発電方式が最高の効率を発揮して、発電効率は39〜41%程度まで改善する。これに対して酸素吹きIGCCの商用機では、燃焼温度を1500度に高めて発電効率を46〜48%に引き上げることができる(図4)。CO2の排出量はUSCと比べて約15%少なくなる。

図4 石炭火力発電の高効率化。出典:J-POWER

 さらに第2段階で取り組む「CO2分離・回収」の技術を実用化できると、石炭火力発電のCO2排出量は大幅に減る。第1段階の酸素吹きIGCCで発生するガスの17%を「シフト変換器」に取り込んでCO(一酸化炭素)をCO2に変換してから、ガス中の炭素成分の90%をCO2として回収する計画だ。発電設備全体で発生するCO2のうち15%を回収することができる。

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