新設の建築物ではなく、地道な取り組みを積み重ねることで省エネを実現しているのが、広島県福山市の三菱電機 福山製作所である。同製作所は各種電力系遮断器や電力管理用計器、省エネ支援機器、スマートメーターシステムなどを製造している生産拠点である。同製作所での省エネの取り組みは、省エネ設備の導入などの一方で、製造現場なども含めて現場のさまざまな工夫により実現していることが特徴だ。
特にこれらの工夫を全体的に「見える化」するために貢献したのが同社が展開している「e&eco-F@ctory」である。
e&eco-F@ctoryは、工場の中のさまざまな機器をネットワークで接続して稼働状況や作業状況などを記録して“見える化”し、TCO(Total Cost of Ownership)削減に貢献するシステムのことだ。工場全体を総合的に最適化し、生産性向上やコスト削減、柔軟性の確保などの実現する取り組みである(図4)。
これにより、設備単位での原単位管理を実現し、生産性の改善はもちろん、エネルギーの有効活用につながる改善などにもつなげることができているという。
これらの取り組みにより、1996年度と2015年度を比較した場合契約電力は年間1250kW(キロワット)の削減に成功したという。また支払い料金としても1996年度と2010年度を比較した場合、25%削減(1億円)できたという。つまり省エネにより工場の収益能力を高めることができたというわけだ。
その他、最新設備を導入して省エネを実現した名古屋製作所 FA機器 新生産棟の事例なども紹介していた。
これらのさまざまな省エネルギー化への取り組みを三菱電機では進めているが「毎年1%削減し続けるのは容易なことではない」と三菱電機 生産技術部 生産技術グループ選任の馬場計明氏は述べる。
「事業所などの省エネルギーへの取り組みについてもオフィス部分や総務部門管轄の領域では毎年取り組みを進めているが、毎年削減し続けるのは限界がある。工場や設計部門にとって最も重要な役割は、モノづくりをどう効率よく、品質高く進めるかということだが、今後はこれらのモノづくりの領域も含めて取り組んでいくことが重要になるだろう」馬場氏は語る。
今後は「エネルギー管理士などエネルギー関連資格を生産ラインの担当者などが取得し、省エネ化を進められるような教育制度などに取り組んでいきたい。福山製作所の事例のように、工場の生産性と省エネルギー化への取り組みは決して対立するものではなく、同時に取り組んでいけるものだ。これらの現場での認識を転換できるような取り組みを進めていく」と馬場氏は述べている。
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