地域密着型のバイオマス発電が拡大、太陽光の買取価格は下がり続ける2016年の電力メガトレンド(2)(2/4 ページ)

» 2016年01月06日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

買取価格が高いバイオマス発電

 バイオマス発電は燃料さえ入手できれば、全国どこでも実施することが可能だ。固定価格買取制度の対象になるバイオマスは5種類ある。このうち燃料の製造・調達コストが高いメタン発酵ガスと未利用木材を利用したバイオマス発電には太陽光よりも高い買取価格が設定されている(図4)。

図4 2015年度の買取価格(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 バイオマス由来のメタン発酵ガスは下水の処理工程で発生する消化ガスをはじめ、家畜の糞尿や食品廃棄物を発酵させて作ることができる。これまでのところ導入件数が多いのは下水処理場の消化ガスを利用したバイオマス発電だ。従来は消化ガスの大半を焼却処分していたが、小規模なガス発電機を導入して燃料に利用できるようになった。現在も全国各地の自治体が地域の資源を活用した再生可能エネルギーとして導入計画を推進中だ。

 固定価格買取制度の最初の2年間に認定を受けたバイオマス発電設備の件数を見ると、メタン発酵ガスのほかに木質バイオマスを利用したものが多い(図5)。木質バイオマスは「未利用木質」「一般木質・農作物残さ」「建設廃材」の3種類に分かれるが、最も大きく伸びているのは未利用木質を燃料に使ったバイオマス発電である。

図5 固定価格買取制度で認定を受けたバイオマス発電設備の件数(累計)。出典:日本有機資源協会(資源エネルギー庁のデータをもとに作成)

 日本の面積のうち森林が占める割合は67%にも達する。つまり国土の3分の2を森林が占めている。森林から切り出された原木は加工して住宅や家具に使われるが、曲がった部分や端の部分は使われないまま放置されることが多い。さらに森林を健全な状態に保つために木を間引く必要があり、間伐した木材の多くも利用されずに残っている。

 こうした未利用の木材をチップに加工してバイオマス発電の燃料に使えば、間伐を促進して森林の環境を改善できるうえに、放置した木材も減らせる。そればかりか林業に新たな収入がもたらされ、木材の運搬やチップの加工、発電所の運営で雇用を生み出すことも可能だ。市場の縮小が続く日本の林業を活性化する手段として、地域ごとに自治体や森林組合が協力する体制でバイオマス発電の導入プロジェクトが活発になってきた。

 地域ぐるみのバイオマス発電では岡山県の真庭市が取り組んでいる事例が先進的だ。市と森林組合、さらに製材会社などが加わって「真庭バイオマス発電所」を2015年4月に稼働させた(図6)。森林組合や製材会社が年間15万トンにのぼる木材を提供して、発電量は2万2000世帯分に相当する。真庭市の総世帯数(1万8000世帯)を上回る規模の電力になり、地域のエネルギー供給と林業の活性化に貢献していく。

図6 「真庭バイオマス発電所」の全景(上)、燃料供給計画(下)。出典:銘建工業、資源エネルギー庁

 真庭市は「バイオマス産業杜市(とし)」の構想を掲げて、木質バイオマスのほかにも家畜の糞尿や農作物残さを利用した発電事業と燃料製造事業を計画中だ。2022年度までにバイオマス産業で250人分の新規雇用を生み出しながら、年間に30万トンのCO2排出量を削減する。真庭市に続いて農林業が盛んな全国各地で、バイオマス産業による地域の活性化に向けた取り組みが始まっている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.