省エネ対策に続いて第2のテーマである再エネの導入拡大は固定価格買取制度の改革が中心になる。発電コストを抑えながら導入量を増やすために、買取価格を中長期的に低減させる新方式を導入する。非住宅用の太陽光発電は大規模な設備を対象に入札による価格決定方式を取り入れるほか、風力発電と住宅用の太陽光発電には将来の価格低減スケジュールを設定して買取価格を引き下げていく。
その一方で開発期間が長期にわたる風力・地熱・水力発電に対しては、規制を緩和して事業者の導入意欲を高める必要がある。特に大規模な地熱発電では事業化の検討に着手してから運転を開始するまでに10年以上もかかる(図4)。このため将来の買取価格が決定していない段階で事業化を判断しなくてはならず、事業者のリスクは大きい。
新しい制度では数年先の買取価格を事前に決定するほか、建設前に必要な環境影響評価(アセスメント)の手続きを簡素化して期間を短縮する。電力会社に対する発電設備の接続申込も現在は環境影響評価の後に手続きを開始することになっているが、それよりも早い段階で申し込みを可能にして事業者のリスクを軽減させる。
第3のテーマになる新しいエネルギーシステムの構築は3つの観点で実施する。1つ目はエネルギーの需給バランスを最適化するシステムで、具体的には「ネガワット取引市場」や「バーチャルパワープラント」を構築していく。ネガワット取引市場は家庭や企業が節電で削減した電力を売買できるようにする制度だ(図5)。2017年までに遠隔制御の仕組みや取引ルールを整備して市場を創設する。
一方のバーチャルパワープラントは地域ごとに再生可能エネルギーの発電設備や蓄電池を組み合わせて、全体を1つの発電所のように機能させる。各地点の発電量・蓄電量・消費量のデータを電力センサーとインターネットを活用したIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の技術で収集・管理して需給バランスを最適化する(図6)。実際にシステムを構築して技術を実証するプロジェクトから着手する予定だ。
このほかに2つ目の取り組みとして火力発電のCO2排出量を削減するための枠組みを強化する。2030年度にCO2排出係数を0.37kg-CO2/kWh(CO2換算キログラム/キロワット時)まで低減することが目標になる。新設・既設の火力発電所に対して発電効率の基準を設定してCO2排出量を抑制する。
新エネルギーシステムの3つ目は水素・燃料電池の拡大だ。2014年6月に策定した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」に基づいて対策を実行していく(図7)。当面は2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、家庭用・業務用・産業用の燃料電池と燃料電池車・水素ステーションを普及させる。さらに2030年に向けて水素発電プラントを実用化して、水素エネルギーの大量導入を図る戦略である。
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