ITを活用したエネルギー管理市場は3812億円に、HEMSが飛躍的に成長エネルギー管理(1/2 ページ)

調査機関のミック経済研究所は、日本国内におけるエネルギーマネジメントシステム(EMS)ソリューション市場について調査を行い、その結果概要について公表した。2015年度の国内市場規模は前年度比5.3%増の3812億円規模に拡大している。

» 2016年01月13日 11時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 住宅やオフィスビル、工場などのさまざまな分野で、省エネ規制がより強まる動きが進んでいる。そこで注目されているのが、ITを活用してエネルギーを“見える化”し、エネルギー使用量の効率的な管理制御などを行う「エネルギー・マネジメント・システム(EMS)」の活用だ。調査機関であるミック経済研究所は、日本国内におけるエネルギーマネジメントシステム(EMS)ソリューション市場の調査を行い、その結果概要について公表した。

 同調査は国内の主要EMSベンダー、ゼネコン、サブコン、重電・電気メーカー、コンサルティング会社など47社への個別調査を行い、EMS市場の推移、および事業戦略について調査を行ったもの。調査結果では2015年度のEMS市場規模は2014年度比で約5.3%増の約3812億円と推定している(図1)。以下では、産業、業務、住宅の各分野の動向についてみていく。

図1 ESMソリューション市場規模の調査結果 出典:ミック経済

産業向けは鈍化、しかし中小規模への導入はこれから

 工場などの産業向けEMSソリューションの2015年度の市場規模は、市場全体の約20.5%となる約781.5億円。2014年度比の成長率は市場全体の伸びよりやや少ない3.8%となった。日本国内における大型工場などの新設が減少していることに伴い、大規模な中央監視型のEMS市場の成長は鈍化していると指摘した。

 一方でEMSを用い照明、空調などの従来異なるシステムで管理されていた機器や設備を統合管理したいというニーズが高まっている他、EMSの導入が進んでいない中・小規模工場への導入といった新規需要が喚起される可能性があるとしている。

堅調な業務向けEMS市場

 国内EMSソリューション市場の中で最大規模となるのがビルやオフィス、ホテルなどの商業施設、学校施設などが対象となる業務向け市場だ。2015年度の市場規模は全体の約75.2%を占める2866.6億円で、前年度比の成長率は5.5%と推定した。

 2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けた、建築・設備投資などの需要増が市場成長を大きくけん引した。今後もこうした投資額に比例するかたちで市場が拡大していくと見られる。SaaS(Software as a Service)型の安価なEMSシステムを利用し、多店舗展開を行っている小売・飲食店などの事業者が本部一括管理型のソリューションを活用する動きも目立っているという。この他には学校・研究機関などの文教系施設への導入率も高い成長を示した。

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