バイオガス発電で食品リサイクルへ、1日80トンの廃棄物から940世帯分の電力自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2016年01月21日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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原子力発電所に隣接する牧之原市

 牧之原市は全国一の茶の産地で知られている。市内には茶畑が多く、森林も広がっている。畜産業や食品加工業も盛んなことから、牧之原市は2009年に「バイオマスタウン構想」を策定してエネルギーの地産地消に取り組んできた(図3)。アーキアエナジーがバイオガス発電所の建設地を牧之原市に決めた理由の1つである。

図3 「まきのはらバイオマスタウンプロジェクト」の全体像。出典:牧之原市

 牧之原市ではバイオマスタウン構想に続いて2013年には「エネルギータウン構想」を策定して、太陽光や風力、小水力や海洋エネルギーも含めて再生可能エネルギーの導入量を拡大するプロジェクトを推進している(図4)。

図4 「牧之原市エネルギータウン構想」の展開イメージ(2015年度〜)。出典:牧之原市市民生活部

 エネルギータウン構想を発表した2年前の2011年9月には、牧之原市議会が中部電力の「浜岡原子力発電所」の永久停止を決議した。浜岡原子力発電所が立地する御前崎市は牧之原市に隣接していて、市内で最も近い地域は原子力発電所から2キロメートルほどしか離れていない。牧之原市の全域が20キロメートル圏内に入る(図5)。

図5 「浜岡原子力発電所」と牧之原市(青い枠)の立地。出典:牧之原市

 原子力発電所に代わる電源を再生可能エネルギーで拡大しながら、CO2(二酸化炭素)排出量の削減も図る。牧之原市では2050年度の市内のCO2排出量を2006年比で半減させることを目指している。そのために2015年度に3万トンの削減目標を掲げて、風力・バイオマス・太陽光・海洋エネルギーのプロジェクトに注力してきた(図6)。

図6 「牧之原市エネルギータウン構想」の基本方針と重点プロジェクト。出典:牧之原市市民生活部

 ただし現在のところ必ずしも順調にプロジェクトが進んでいるわけではない。海洋エネルギーでは牧之原市と御前崎市にまたがる「御前崎港」の沖合に洋上風力発電所を建設する計画が進んでいたが、航空自衛隊のレーダーに影響を与えることが判明して計画を断念している。そうした中でバイオガス発電所が運転を開始すれば、2050年度のCO2削減目標に向けて一歩前進する。

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