バイオマス発電+人工光合成で一歩先へ、海洋エネルギーの挑戦も続くエネルギー列島2015年版(41)佐賀(2/4 ページ)

» 2016年02月02日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

陶器と石炭の町にもバイオマス発電

 佐賀市は同様の取り組みを「佐賀市清掃工場」でも実施中だ。市内から回収した生ごみなどを焼却処理する時の高温の熱で発電する。年間の発電量は3200万kWhに達して、一般家庭の9000世帯分の電力になる。下水浄化センターと合わせると1万世帯分にのぼり、佐賀市の総世帯数(9万7000世帯)の1割強をカバーすることができる。

 清掃工場でも発電に伴って発生するCO2を分離・回収して、人工光合成による野菜の栽培や藻類の培養に利用中だ。佐賀市は2014年から「佐賀市バイオマス産業都市構想」を推進してきた。清掃工場と下水浄化センターを中核に、地域の廃棄物を再生可能エネルギーに転換して環境にやさしい町づくりを進めていく(図3)。

図3 「佐賀市バイオマス産業都市構想」の全体像(上)、家庭から出る資源の活用イメージ(下)、いずれも画像をクリックすると拡大。出典:佐賀市環境部

 佐賀市に続いて他の市町村にもバイオマス発電プロジェクトは広がってきた。かつて陶器と石炭の積み出し港として栄えた伊万里市の湾岸にある工業団地で、大規模な木質バイオマス発電所の建設計画が進んでいる(図4)。港の機能を生かして、東南アジアから輸入するパームヤシ殻を燃料に利用する。

図4 「佐賀パワービレッジバイオ火力発電所(仮称)」の建設予定地。出典:日本新電力

 発電能力は50MW(メガワット)で、2017年3月に運転を開始する予定だ。年間に330日稼働すると、発電量は4億kWhに達する。一般家庭で10万世帯分を超える電力になる。伊万里市の総世帯数(2万3000世帯)の4倍以上に匹敵する。

 このバイオマス発電所は組合方式で電力を販売する日本ロジテック協同組合のグループ会社が建設・運営する計画だ。再生可能エネルギーを多く含む電力を組合員に供給するプロジェクトの一環である。土地・建物・設備を含む総投資額は144億円にのぼり、バイオマス発電事業で60人の雇用を生み出す。資源がなくても再生可能エネルギーで地域を活性化する事例の1つになる。

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