太陽光発電に初めて環境影響評価を適用、長野県で89MWメガソーラー計画自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2016年02月04日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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環境影響評価は16項目に及ぶ

 諏訪四賀ソーラー事業では第1段階の方法書の公告・閲覧が1月20日に始まった。1カ月間の縦覧を通じて住民と市町村の意見を集めたうえで、知事が事業者あてに意見書を出す手続きになっている。同様の手続きを繰り返しながら、環境影響評価の調査・予測方法や保全対策などに修正を加えていく。手続きが完了するのは2年後の2017年度末になる見通しで、その後に設計・建設工事に入る(図4)。

図4 事業の実施予定期間。出典:Looop(環境影響評価方法書の要約書)

 環境影響評価の対象には16項目が含まれている。国の環境影響評価の対象にもなる風力・水力・地熱・火力の実施項目とほとんど変わらない。太陽光発電では問題が発生しにくい悪臭や地盤沈下を除き、大気や騒音・振動、水質・土壌、動植物や景観に対する影響を調査して必要な保全対策を評価書に盛り込んでいく(図5)。

図5 環境影響評価の実施項目。出典:Looop(環境影響評価方法書の概要説明資料)

 特に自然環境を保全する対策として用地の4割以上を森林や湿原のまま残すほか、発電設備の周囲に緑地や調整池を整備する(図6)。調整池は周辺地域の洪水対策の役割も果たす。用地の造成にあたって伐採した樹木は木質チップに加工して再利用する方針だ。

図6 対象区域の土地利用計画。緑色が森林と緑地、茶色の区域に発電設備を設置。出典:Looop(環境影響評価方法書の要約書)

 太陽光発電は燃料や発電機を使う必要がないことから、再生可能エネルギーの中でも環境負荷が最も低い電力源と考えられている。国が太陽光発電を環境影響評価の対象に加えていない理由だ。ただし大規模なメガソーラーになると広大な土地を必要とするため、森林破壊や景観悪化などの問題点が指摘され始めた。

 長野県のほかにも太陽光発電に対して環境影響評価を義務づける自治体が増えている。事業者にとってはコストと開発期間の両面で負担が大きくなるが、再生可能エネルギーを拡大して地域社会に貢献するためには必要なプロセスである。

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