固定価格買取制度の改正案が決まる、2017年度から価格決定方式を変更自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2016年02月12日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

買取価格を引き下げて賦課金を抑制

 政府が買取価格の決定方式を変更する背景には、固定価格買取制度を実施してから顕在化した重大な課題がいくつかある。第1に再生可能エネルギーの導入量が太陽光発電に偏っている問題だ。2030年のエネルギーミックス(電源構成)を想定した各電源の導入量のうち、すでに太陽光発電については買取制度で認定した発電設備の規模が2030年の見込みを超えてしまった(図3)。

図3 電源別の導入状況(2015年3月時点)と2030年の導入見込量。出典:資源エネルギー庁

 太陽光発電は他の電源に比べて設備を導入しやすいうえに、当初の買取価格が高めに設定されたことから、事業者用を中心に短期間で急速に拡大した。ただし天候によって発電量が変動するため、設備が増えすぎると電力の安定供給に支障を生じかねない。こうした問題点の解消に向けて、大規模な太陽光発電設備を対象に入札方式を導入するほか、住宅用の買取価格も長期に低減させて導入量を抑制する必要があった。

 第2の課題は買取費用の増大に伴って、電力の利用者が負担する賦課金が想定以上のペースで拡大していることだ。2015年度の買取費用は1兆8400億円にのぼり、利用者が支払う賦課金も1兆3200億円に達した(図4)。前年度から2倍以上に増加して、今後さらに増え続ける。長期的に買取価格を引き下げていかないと、賦課金が過剰に高くなって電気料金の上昇をもたらしてしまう。

図4 買取費用と賦課金の増加。出典:資源エネルギー庁

 このほかにも太陽光発電に偏重する理由の1つは、風力をはじめ他の電源の開発期間が長くかかることである。発電事業者が事業化を判断してから運転開始に至るまでの期間を比較すると、太陽光では大規模な発電設備でも2年程度で済むのに対して、地熱・風力・中小水力では最短で4年程度、バイオマスでも3〜4年かかるのが一般的だ(図5)。

図5 電源別の事業化決定から運転開始までの標準期間。出典:資源エネルギー庁

 改正案では各電源の買取価格を翌年度以降まで含めて提示できるようにする。開発期間が長くかかる風力・中小水力・地熱・バイオマスに対しては、数年先に認定を受ける発電設備の買取価格を同じ水準で維持する可能性が大きい。いったん買取価格が決まると、従来と同様に買取期間を通じて価格は変わらない。

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