潮流発電の実用化へ前進、新潟・粟島沖で流速を確認自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2016年02月15日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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低い流速でも潮流発電を可能に

 新潟県は平均流速が最も速かった8月の計測値と流況モデルをもとに、12カ月間の平均流速と最大流速をシミュレーションで計算した。夏を中心に4〜10月の春から秋にかけて平均流速が速くなる一方、冬の11〜3月には遅くなる(図5)。ただし西側では1月に平均流速が最大になり、冬でも潮の流れが速くなる時期が見込まれる。

図5 年間の流況シミュレーション結果(上)、シミュレーションに利用した流況モデル(下)。出典:新潟県産業労働観光部

 海上保安庁が1999〜2001年度に実施した潮流発電の研究によると、流速が1メートル/秒を超えるとエネルギー量が増え始めて、2メートル/秒くらいで最大に達する(図6)。流速が1メートル/秒以上になる海域が潮流発電には望ましいと考えられる。ただし日本の近海で潮流が1メートル/秒を超える海域は極めて少なく、粟島沖でも最大0.83メートル/秒にとどまる。実用化には低速でも発電できる装置の開発が不可欠になる。

図6 潮流の速さと年間のエネルギー量。m/s:メートル/秒、MWh:メガワット時。出典:海上保安庁

 新潟県は日本大学と共同で2013年度から、低速の潮流でも効率的に回転する潮流発電機の開発を進めてきた。垂直に設置した4枚の羽根を潮流で回転させて発電する仕組みだ(図7)。2014年度には小型のプロトタイプを使って、粟島沖で2日間の実証試験を実施している。今後もプロトタイプの発電機を改良して実証試験に取り組んでいく。

図7 潮流発電機のイメージ(画像をクリックすると拡大)。出典:日本大学ほか

 流況調査の結果から、開発中のプロトタイプでも発電可能なことを確認できた。プロトタイプの発電機を使って実証試験を続けた後に、出力が200kW(キロワット)級の発電ユニットを搭載した実用モデルの開発につなげる計画だ。潮流発電の実用化に向けて粟島沖の実証プロジェクトにかかる期待は大きい。

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