地熱発電所が湯煙を立ち上げ、県民発電所は太陽光で動き出すエネルギー列島2015年版(43)熊本(3/3 ページ)

» 2016年02月16日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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製紙工場で未利用木材をバイオマス発電に

 熊本県の再生可能エネルギーは太陽光発電が大半を占めているものの、中小水力や地熱発電の導入量も増えてきた。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模では、地熱発電は全国で第2位に、中小水力発電が第3位に拡大している(図8)。

図8 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

 小水力発電では阿蘇山の南側にある山都町(やまとちょう)で、九州電力が2015年3月に「竜宮滝(りゅうぐうだき)発電所」の運転を開始した。町の観光名所にもなっている竜宮滝に隣接する山の斜面を利用した小水力発電所だ(図9)。発電所が景観を損ねないように、町や地元の関係者と協議を重ねて建屋の色や形を決めた。

図9 「竜宮滝発電所」の全景。出典:九州電力

 川の上流から農業用水路に取り込んだ水を使って発電する。20メートルの落差がある水流で最大200kW(キロワット)の電力を供給することができる。年間の発電量は170万kWhを見込んでいて、一般家庭の使用量に換算して470世帯分に相当する。

 このほかにバイオマス発電の導入も着々と進んでいる。日本製紙が八代市の工場に建設した木質バイオマス発電所が代表的な事例だ(図10)。製紙に使う大量の木材を調達するネットワークを生かして、九州各地から間伐材などの未利用木材を集荷して発電に利用している。

図10 「八代工場バイオマス発電所」の全景。出典:日本製紙

 発電能力は5MWで、2015年6月に運転を開始した。バイオマス発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を標準の80%で計算すると、年間の発電量は3500万kWhに達する。一般家庭で9700世帯分に相当する電力になる。燃料に使用する木質チップは年間で7万トンにのぼる。

 バイオマス発電の分野では熊本県が運営する「熊本北部浄化センター」の取り組みにも注目したい。いち早く10年前の2006年に燃料電池を導入して、浄化センターで消費する電力と熱を自給自足している。下水の汚泥処理で発生したバイオガス(消化ガス)を使って水を電気分解する方法で水素を作り、燃料電池に供給する仕組みだ(図11)。

図11 「熊本北部浄化センター」のバイオガス発電設備(上)、グリーン電力証書発行事業の仕組み(下)。出典:熊本県庁

 4台の燃料電池で合計400kWの発電能力がある。年間の発電量は260万kWhになり、浄化センターの消費電力の約半分を供給している。2015年6月までの9年間の累計で約3億円の電気料金を削減することができた。

 さらにバイオガスを利用してCO2(二酸化炭素)の排出量を削減できる特性を生かし、その環境価値を企業などに売却する「グリーン電力証書」の活動にも取り組んでいる。グリーン電力証書を購入した企業は社内でグリーン電力を利用した場合と同等とみなされ、購入分をCO2排出量の削減に組み入れることができる。エネルギーの地産地消を地球温暖化対策に活用するモデルケースの1つである。

*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −九州編 Part1 −」をダウンロード

2016年版(43)熊本:「建築廃材や竹でもバイオマス発電、中小水力は全国1位」

2014年版(43)熊本:「阿蘇のふもとで地熱と小水力を増やす、メガソーラーに続く電力源に」

2013年版(43)熊本:「メガソーラーが県内47カ所に急拡大、6年も前倒しで目標達成へ」

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