九州一の森林県にバイオマス発電所が続々誕生、太陽光で水素も作るエネルギー列島2015年版(45)宮崎(3/3 ページ)

» 2016年03月01日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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降水量が多い山間部では小水力発電

 国内で最大級のメガソーラーの開発プロジェクトも進んでいる。宮崎市にあるゴルフ場の建設予定地だった場所を利用して、発電能力が96MWのメガソーラーを稼働させる計画だ(図8)。140万平方メートルの用地に合計30万枚の太陽光パネルを設置する壮大な構想である。

図8 「細江太陽光発電所」の完成イメージ。出典:パシフィコ・エナジー

 年間の発電量は1億kWhを超える見込みで、一般家庭の3万世帯分に相当する電力を供給できる。運転開始は2018年の第2四半期(4-6月)を予定している。発電事業者は米国系のパシフィコ・エナジーで、GE(ゼネラルエレクトリック)グループと共同でプロジェクトを推進する。

 宮崎県では太陽光発電とバイオマス発電の導入量が急速に伸びてきた。固定価格買取制度の認定を受けた設備の規模では太陽光が全国で7位、バイオマスが8位に入る(図9)。このほかに風力発電と中小水力発電も着実に増え始めている。

図9 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

 沿岸部を中心に日射量が豊富にありながら、山間部では降水量が多いことも宮崎県の気候の特徴だ。九州電力の水力発電所の半分以上が宮崎県内に集中している。最近では自治体と民間企業が連携して、小水力発電の導入プロジェクトが広がってきた。

 九州全体のほぼ真ん中に位置する椎葉村(しいばむら)の「間柏原(まかやばる)発電所」はユニークな事例だ(図10)。村営の発電所は1954年に運転を開始して、約60年間にわたって発電を続けてきた。ところが発電設備の老朽化が進み、出力の低下に加えて修繕費の増大も問題になっていた。

図10 「間柏原発電所」の全景。出典:日本工営

 そこで椎葉村では発電設備の更新を決断して、小水力発電の設計・建設で実績がある日本工営に委託することにした。2015年3月に完成した新しい発電所は出力が680kW(キロワット)から750kWへ10%増えている。これまでの水車発電機は垂直方向に回転する横軸型だったが、季節によって変動する流量に対応しやすい立軸型に変更した効果である(図11)。

図11 新たに導入した立軸型の水車発電機。出典:日本工営

 年間の発電量は440万kWhを想定している。1200世帯分に相当する電力で、椎葉村の総世帯数(1170世帯)とほぼ同じ規模である。発電した電力は固定価格買取制度で売電できるようになった。電動の取水計と遠隔監視装置を備えて、常に運転状況を把握することが可能だ。小水力発電所のリニューアルは売電収入の増加と運営コストの低減を椎葉村にもたらす。

*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −九州編 Part2 −」をダウンロード

2016年版(45)宮崎:「太陽・風・水・地熱・森林に恵まれた南国に、CO2フリーの電力が広がる」

2014年版(45)宮崎:「南国の特産品でバイオマス発電、サツマイモから鶏糞まで燃料に」

2013年版(45)宮崎:「降水量が日本一の県で水力を再生、古い発電所とダムの増改築に着手」

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