「低炭素電源」を2050年に9割超へ、温暖化対策で地域経済を潤す法制度・規制(2/3 ページ)

» 2016年03月02日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

エネルギー収支が地域の経済力に影響

 国を挙げて温室効果ガスの削減策を実施して、同時に経済を成長させることが提言の最大のテーマだ。OECD(経済協力開発機構)に加盟する国のうち1人あたりのGDP(国内総生産)が多い20カ国の状況を見ると、2000年から2012年までの温室効果ガスの削減率とGDPの成長率が見事に比例している(図4)。

図4 温室効果ガス排出量の削減率とGDP成長率(OECD高所得国の2000年〜2012年、日本は震災前後の2010年と2014年のデータも併記)。出典:環境省(OECDのデータなどをもとに作成)

 その中で日本だけはマイナス成長にあえいでいる。東日本大震災の影響を除くために2010年の時点で比較しても、他国には遠く及ばない。欧米の先進国がエネルギーの利用増加を伴わずに経済を成長させるモデルに転換したのに対して、日本だけがエネルギーを大量に消費する産業構造から抜け出せず、結果として経済の成長を阻害してしまった可能性が大きい。

 この問題は地方にも波及している。全国の自治体ごとに電力・ガス・ガソリンなどのエネルギー代金の収支(地域外への販売と地域外からの購入の差額)を算出すると、2013年の時点で9割以上の自治体が赤字の状態にある(図5)。

図5 自治体ごとの地域内総生産に対するエネルギー代金の収支比率(画像をクリックすると拡大)。出典:環境省

 しかもGDPに相当する地域内総生産に占める赤字額の比率を見ると、赤字の比率が大きい地域ほど1人あたりの平均所得が低くなっている。化石燃料を中心に地域外・海外から大量のエネルギーを購入するほど、地域内の経済力が衰えていく構図が見てとれる。この点からも、地域の資源を生かして再生可能エネルギーを拡大することが地域経済の活性化につながると考えられる。

 さらに長期戦略の1つとして、人口や経済活動が集中する市街地をコンパクトに集約する対策がある。市街地の範囲を狭めることによって、公共交通の利用量を増やして自動車の走行量を減らせるほか、道路や水道などインフラの管理コストも低減する。その結果、サービス産業を中心とする第3次産業の労働生産性を高める効果が期待できる(図6)。

図6 市街地のコンパクト度と第3次産業の労働生産性(都道府県庁所在地)。出典:環境省

 実際に自動車によるCO2排出量と市街地の人口密度は反比例する。加えて市街地の人口密度が高まることで人の交流が進み、知識の交換などを通じて労働生産性を向上させることもメリットの1つと考えられている。都市をコンパクトにする一方で、都市と農山漁村を連携させるネットワークの構築が重要な課題になる。

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