豚の排せつ物からバイオ燃料を、火山の島では地熱発電と水素製造もエネルギー列島2015年版(46)鹿児島(2/4 ページ)

» 2016年03月08日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

全国一多い豚の糞尿からバイオガス

 黒豚で有名な鹿児島県は豚の飼育数が全国で1位だ。養豚業者にとっては大量に発生する糞尿の処理が課題になっている。そこで鹿児島大学では豚の糞尿からバイオガスを製造する実証プロジェクトを2015年11月に開始した。糞尿を発酵させてメタンガスを生成するのと同時に、副産物の消化液を使ってミドリムシも培養する(図3)。

図3 豚の排せつ物からバイオガスを製造する装置(上)、副生物の消化液を利用したミドリムシの培養試験(左下)、バイオマス燃料になるエリアンサスの栽培試験(右下)。出典:リナジェン、鹿児島大学

 豚の糞尿から効率的にバイオガスを製造できれば、発電用の燃料として安定した量を供給できるようになる。一方でミドリムシは栄養補助食品やバイオ液体燃料の原料に利用できる。ミドリムシの培養には太陽光とCO2(二酸化炭素)を使って人工光合成を促進する必要があることから、CO2の有効な利用法としても注目を集めている。

 鹿児島県内ではバイオ燃料の原料になる藻類を大量に培養する実証プロジェクトが進んでいる。巨大なメガソーラーがある臨海工業地帯の七ツ島地区の一角で、IHIが神戸大学などと共同で実施中だ。面積が1500平方メートルある培養池の中に大量の藻類を投入して、人工光合成で増殖させる方法である(図4)。

図4 バイオ燃料の原料になる藻類の屋外培養池(上)、バイオ燃料を生産するプロセス(下)。出典:IHI、NEDO

 増殖した藻類を乾燥させると油脂を抽出することができて、自動車や航空機の燃料になる炭化水素油を生成することができる。石油から作った軽油に代わって、CO2を吸収する効果のあるバイオ燃料を自動車や航空機で利用できるようにする試みだ。

 IHIは同じ七ツ島地区に木質バイオマス発電所を建設することも決めた。国内の木質バイオマス発電所では最大級の49MWの発電能力を見込んでいる。年間の発電量は3億3700万kWhを想定していて、実に9万3000世帯分の電力を供給できる。七ツ島がある鹿児島市の総世帯数(27万世帯)の3分の1をカバーする電力になる。2018年末に運転を開始する予定だ。

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