空気で発電「亜鉛電池」、家電が直接つながるスマートエネルギーWeek 2016(3/3 ページ)

» 2016年03月11日 11時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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「空気亜鉛電池」、古い技術を新たな製品へ

 エイターナスは、亜鉛と空気中の酸素が反応することで電流を生み出す空気亜鉛電池だ。空気亜鉛電池は、空気金属電池としては最も長い歴史があり、発明されてから100年以上経過している。国内での主な用途は補聴器用のボタン形電池だ*4)

 ボタン形電池では次のような反応が起こる。正極では酸素(O2)と水(H2O)、電子(e)から水酸化物イオン(OH)が生じ、負極では亜鉛が2段階の反応で酸化亜鉛に変化する。

正極 O2+2H2O+4e → 4OH

負極 Zn+4OH → Zn(OH)42−+2e、Zn(OH)42− → ZnO+H2O+2OH

全反応 2Zn+O2 → 2ZnO

 空気亜鉛電池では構造上、負極の亜鉛と電解質だけが必要であり、正極を用意する必要がない。このため、電池の重量を軽くできる(図5)。ボタン形電池では正極のために使っていた空間を亜鉛に振り分けるため、容量を大きくできた。これはエイターナスでも同じだ。

*4) 国内では1980年代から利用されている。種別記号は「PR」。ゲル状の亜鉛を用い、電圧は1.4V。他のボタン形電池よりも容量が大きく、軽い。つまりエネルギー密度が最も高い。

図5 一般的な電池とエイターナスの違い エイターナスは空気電池であるため、正極(図中では陰極と表記)を持たない。

韓国発の新技術

 エイターナスの基になった空気亜鉛電池を開発したのは韓国EMW Energy。同社は2008年に米国で空気亜鉛電池の特許を出願している。「韓国では軍用無線機を動かすためにEMW Energyの電池が使われている。信頼性や容量などの条件を満たしており、今回のエイターナスで民生品にも広がった形だ」(西村氏)。

 軍用品は図6の手前に示したように強固な外装を備え、重量もある。これに対して、エイターナスは2.5kgと軽い。寸法は、18cm×17cm×7.5cm。横倒しに置くと、A5判とほぼ同じ面積を占める。

図6 エイターナスの基になった軍用品 右側はエイターナスで動作する監視カメラシステムの映像
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