小さな離島で再生可能エネルギー7割へ、台風を避けながら風力発電と太陽光をエネルギー列島2015年版(47)沖縄(3/3 ページ)

» 2016年03月15日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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先行する宮古島の実証プロジェクト

 離島に再生可能エネルギーを導入する取り組みでは宮古島が最も進んでいる。宮古島は県内で本島を含めても4番目に大きな島である。島の南側にある海沿いの土地で2010年に「宮古島メガソーラー実証研究設備」が稼働した(図8)。

図8 「宮古島メガソーラー実証研究設備」の全景。出典:沖縄電力

 発電能力が4MWの太陽光発電設備を中核に、同じ出力4MWのNAS(ナトリウム硫黄)電池と蓄電容量200kWhのリチウムイオン電池を組み合わせた設備である。太陽光発電の出力変動に対して、短時間の小さな変動はリチウムイオン電池で吸収する一方、長時間の大きな変動にはNAS電池を利用する仕組みだ。

 宮古島市には周辺の小さな島を合わせて2万5000世帯が暮らしている。最大で50MW程度の電力需要に対して、火力発電を中心に風力と太陽光を組み合わせて電力を供給する(図9)。太陽光発電の比率は最大需要の8%に相当するため、出力が変動すると影響は大きい。急激な出力変動にも蓄電システムで対応しながら、安定した発電計画を可能にすることが実証研究の目的だ。

図9 宮古島市の発電設備。出典:沖縄電力

 この実証研究と並行して、宮古島市では2013年から「全島EMS実証事業(すまエコプロジェクト)」に取り組んできた。島内の家庭や事業所、さらに農業施設にもEMS(エネルギー管理システム)を設置して、全島の電力消費状況を予測しながら再生可能エネルギーを最大限に利用する狙いだ(図10)。

図10 宮古島市の「全島EMS実証事業」による再生可能エネルギーの活用イメージ。出典:宮古島市企画政策部

 今後は実証事業から商用サービスへ移行させる。EMSを使って家庭や事業所のヒートポンプ給湯器や電気自動車用の充電器も制御できるようにして事業範囲を拡大する予定だ。EMSを中核にしたエネルギー管理事業をビジネスとして成立させたうえで、県内の他の地域にも展開してエネルギーの地産地消を推進していく。

 沖縄県の再生可能エネルギーは本島を含めると太陽光発電が圧倒的に多い。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備のほとんどを太陽光が占めている(図11)。特に2015年に入ってから大規模なメガソーラーが相次いで運転を開始した。

図11 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

 その中で最も規模が大きいのは2015年3月に運転を開始した「うるまメガソーラー発電所」である。石油元売り最大手のJXグループが本島南部の「うるま市」で運営する石油基地の構内に建設した(図12)。海に面した16万平方メートルの遊休地を利用して、発電能力は12MWに達する。

図12 「うるまメガソーラー発電所」の全景(画像をクリックすると拡大)。出典:JX日鉱日石エネルギー

 この石油基地は沖縄本島と海中道路でつながっている平安座島(へんざじま)にある。石油に依存してきた沖縄県が太陽光を中心に再生可能エネルギーへ転換を図る象徴とも言える。美しい自然環境を維持しながら、災害に強いエネルギー供給体制が県内の全域に広がり始めた。

*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −九州編 Part2 −」をダウンロード

2016年版(47)沖縄:「台風に負けない風力発電に挑戦、バイオマスで島のCO2を減らす」

2014年版(47)沖縄:「島のエネルギーをCO2フリーに、石油から太陽光・風力・バイオマスへ」

2013年版(47)沖縄:「海洋温度差で未来をひらく、離島の自給率100%へ太陽光と風力も加速」

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