風力で作る水素サプライチェーン実証、補助金に頼らない水素社会への第一歩に自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2016年03月15日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

東芝が開発した水素製造装置を動かす

図5 今回の実証で利用する東芝の水素製造装置(クリックで拡大)

 1つ目の用途は東芝が開発した水素製造装置の駆動電力としての利用だ。東芝は自立型の水素エネルギー供給システム「H2One」を開発して実証も進めているが、今回利用するのはこの一部機能を切り出し、実証用にカスタマイズを加えた専用装置だという。水を電気分解して1時間当たり最大10Nm3(ノルマル立方メートル)の水素を製造できる(図5)。外形寸法は高さ2.3×幅2.5×奥行き6メートルだ。

 製造した水素は、岩谷産業が設置する容量400Nm3の水素タンクに低圧で貯蔵する。ハマウィングが完全に停止した場合でも、2日間は12台の燃料電池フォークリフトの運用に支障をきたさない量の水素を貯蔵できる計算だという。貯蔵した水素は45MPa(メガパスカル)の圧力で、岩谷産業が新開発した簡易水素充填車に充填する(図6)。

 その際にタンク内の低圧水素を45MPaまで圧縮するため、圧縮装置を利用する必要がある。ハマウィングでつくった電力の2つ目の使い方が、この圧縮装置の駆動用電力としての利用だ。

図6 岩谷産業が開発した簡易水素充填車。ハイブリッド車両をベースにしており270Nm3の水素を貯蔵できる。燃料電池フォークリフト用として開発されており、蓄圧器も備える。実証導入は今回が初だ(クリックで拡大)

180台分の使用済みバッテリーで蓄電システムを構築

 当然ながら再生可能エネルギーである風を活用するハマウィングは、天候や季節によって出力が大きく変動する。水素は最大で約2日分貯蔵できるが、ハマウィングが停止し電力供給が止まり、水素圧縮装置を動かせなければ水素供給も絶たれてしまう。こうした状況を回避するために設置するのが、トヨタのハイブリット車の使用済みバッテリーを活用した蓄電システムだ(図7)。

図7 使用済みバッテリーを活用した蓄電システムの一部。これをさらに12台並べる(クリックで拡大)

 蓄電システムは使用済みニッケル水素バッテリーを180個利用し、容量は150kWh。パワーコンディショナーも同時に併設する。ハマウィングでつくった電力の3つ目の用途が、この蓄電池システムを活用した非常用電力としての利用だ。実証では変動する発電量、蓄電量、貯蔵タンクにある水素の残量、実際の実際の水素需要の時間差など複数の要素を考慮しながら、各設備を最適にコントロールしていく必要がある。

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