政府は2030年の電源構成(エネルギーミックス)の目標値を設定するにあたって、国全体の電力コストを引き下げる方針を掲げた。そのために再生可能エネルギーの買取費用を2030年に4兆円以下に抑えながら、火力発電と原子力発電の燃料費を4兆円近く削減する計画だ(図4)。
すでに再生可能エネルギーの買取費用は2兆円を超えたが、太陽光発電の買取価格を引き下げて4兆円以下に収める方針だ。一方の燃料費は化石燃料の輸入価格がどう変動するか、そして原子力発電の再稼働がどのくらい進むかによるため、長期的に予測することは極めてむずかしい。
少なくとも2016年度は化石燃料の輸入価格の低下と発電量の減少によって燃料費は下がる見通しだ。世界全体で化石燃料が余り始めたことで、火力発電に使う原油・一般炭・LNG(液化天然ガス)の輸入価格は下落傾向が続いている(図5)。特に原油とLNGが2015年に入ってから急落した結果、電力会社の燃料費も大幅に減少した。
燃料費の減少に伴って、賦課金と同様に電気料金に上乗せする燃料費調整額が減り続けている。燃料費調整額の単価は3〜5カ月前の化石燃料の平均輸入価格をもとに、各電力会社が月ごとに算定する。2015年4月分と2016年4月分の単価を比べると、10社すべてで下がっている(図6)。
10社の平均で1年間に燃料費調整単価が3.2円も減った。特にLNGの比率が高い東京電力では単価が5.4円も減り、石炭の比率が高い北陸電力でも1.17円の減少になっている。しかも全社で単価がマイナスになっていて、毎月の電気料金から燃料費調整額を差し引く状況だ。
かりに2016年5月以降の燃料費調整単価が4月分と同じマイナス2.06円(全国平均)で推移すると、標準的な家庭の電気料金は月額で618円安くなる。再生可能エネルギーの賦課金が新単価になって675円上乗せされても、わずか57円の増額で収まる。
加えて火力発電が減少してCO2(二酸化炭素)の排出量を削減できるメリットがある。賦課金の増加ペースが弱まってきたことと考え合わせると、再生可能エネルギーの拡大を過剰に懸念する必要はない。
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