電力全面自由化が再生可能エネルギーに与える影響は何か法制度・規制(1/4 ページ)

2016年4月1日からの電力小売全面自由化を控え、発電事業者や小売事業者はどういう変化を意識し、準備を進めていかなければならないのか。新たに電力小売に参入したLooopは「電力自由化時代における再生可能エネルギーの位置付けと展望」と題したプレスセミナーを開催。電力小売全面自由化を受け、事業者の状況や生活者の意識がどう変わるのかを有識者のパネルディスカッションによって紹介した。

» 2016年03月24日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 Looopは東日本大震災を契機として設立されたエネルギーベンチャーだ。太陽光発電設備を自作できる「MY発電所キット」などを展開し成長してきたが、2016年3月に電力小売に参入することを発表。発電から小売までを担う総合エネルギー企業へと進化を進めようとしている。同社は再生可能エネルギーの利用拡大を大きな目標としているが、今回のプレスセミナーでは電力小売全面自由化が再生可能エネルギーの普及にどのような影響を与えるのかについて有識者のパネルディスカッションを行った。

 登壇したのは、Looopの事業本部企画開発部 部長の小嶋祐輔氏、電力価格比較サイト「エネチェンジ」を運営するエネチェンジ 副社長の巻口守男氏、地域新電力の創出支援を行っているスマートテックの電力・インフラ事業部 部長の岡野太郎氏、市民団体として再生可能エネルギーの普及を推進している国際環境NGO FoE Japan パワーシフト事務局の吉田明子氏の4人である。

発電事業者への影響をどう考えるか

 電力小売全面自由化と再生可能エネルギーの関係性について、問題点を提起したのがエネチェンジの巻口氏である。

photo エネチェンジ 副社長 巻口守男氏 東京工業大学・大学院を卒業後、東京電力に入社。以来、約40年間を電力業界で過ごす。エネチェンジでは、電力業界での知識や経験を基に、全ての消費者に電力自由化のメリットを享受できるよう、メディアでの解説や講演活動を担当

 エネチェンジの巻口氏は40年間に及ぶ電力業界での経験から「再生可能エネルギーで全ての電力を賄うのが究極の理想であることは間違いなくそれは当然の話だ。しかし再生可能エネルギーには『自分で制御できず、変動する』という課題がある。その議論なしに再生可能エネルギーを単純に増やすというのは難しい」と課題を強調した。

 再生可能エネルギーは、太陽光にしても、風力にしても自然の力に頼った発電である。そのため、晴れて風が吹いている状況では、太陽光や風力も十分に発電でき、必要な電力量を上回る発電量を獲得できるが、雨が降ったり、風が吹かなかったりした時には電力が不足するという状況が発生する。この状況をカバーし、停電などの状況が起こらないようにするために用意されているのが「バックアップ電源」である。現状では発電のLNG火力発電所などを使うことが想定されている(図1)。

 巻口氏は「再生可能エネルギーによる発電事業者を増やそうと思えば、普段は使わない設備であるバックアップ電源設備を誰が構築し誰が持つのかということを合わせて考えなければ、増やしてはいけない」と巻口氏は述べた。

photo 図1 再生可能エネルギーの課題。右図が需給管理のミスマッチを示した図(クリックで拡大)出典:Looop
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