最後に、「生活者の再生可能エネルギーへの認識が、電力小売全面自由化にどう変わるのか」という点について見てみよう。それぞれの立場で良い点と課題について述べている。
Looopの小嶋氏は「まず自由化により電気をどこから買うのかという意識が芽生えたことが何よりも大きい」と価値を強調する。「家にソーラーを付けている人は自分の電力をどう活用するかという意識が生まれる。自分の家に発電所があるというメリットについてもあらためて関心が集まると見ている」と述べた。
一方でスマートテックの岡野氏は「価格以外の価値」についてどう生み出すかということを訴える。「生活者にとって電力小売全面自由化により、電力を選ぶ3つの選択肢ができたと考えている。1つ目が価格、2つ目が付加価値サービス(セット割など)、3つ目が再生可能エネルギーだ。価格以外の価値をどう訴えるのかというのは事業者の取り組み次第となる」と企業として幅広い取り組みが新たな価値を生む点を語った。
FoE Japanの吉田氏は「再生可能エネルギーを選びたい消費者は数多くいるのに、まだまだ選択肢が少ないと感じている。これらの事業者がもっと成長して、選びたい人が制約なく選べるようにしていきたい」と述べている。
「政治的な面で電力の問題をどう捉えていくのかという点でさまざまな点が変わってくる」と、エネチェンジの巻口氏は希望と不安の両面を示す。
「例えば、電力会社の現状の三段料金制度だが、この一段目の料金は政治面で国民全てが電力を使用できるようにという意図で設定されたものだ。市場の原理だけでいえば赤字になるので電力会社はいずれなくしてしまうだろう。既に海外では家計負担の1割以上をエネルギー関連費用が占める『エネルギー貧困者』の問題が出てきている。英国では電力自由化前はエネルギー貧困者は100万人だったが自由化後は500万人まで拡大した。これらを税金で支援している状況だ。税金で助けるのか電力で助けるのか、というのは難しい問題だといえる」(巻口氏)
一方で「再生可能エネルギーと消費者の相性はいいと考えている」と巻口氏は述べる。スマートメーターやHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)などにより発電している電力や使用している電力が見えるようになる。これらに対し、デマンドレスポンスなどによる自発的な需給調整の仕組みを組み込むことで「それぞれが電力に対し『頑張る』ことに応えられる社会を構築できれば、自由化による価値が生まれてくるだろう」と巻口氏は語っている。
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