水素・燃料電池の取り組みで最も進んでいるのは家庭用のエネファームである。エネファームは装置の内部で水素を作り、燃料電池で発電して電力と温水を供給することができる。2009年に世界初の製品が市場に投入されて以来、2016年1月末までに累計で15万台以上が普及した(図3)。特に東日本大震災が発生した2011年度から、災害に強い分散型のエネルギー源として導入する家庭が増えている。
政府は従来から2020年に140万台、2030年に530万台のエネファームを普及させる目標を掲げているが、価格の高さが最大の課題だ。現状では普及タイプのPEFC(固体高分子形燃料電池)が平均で136万円、高効率タイプのSOFC(固体酸化物形燃料電池)は平均で175万円まで下がったものの、一般の家庭に広く普及させるにはハードルが高い。
そこで戦略ロードマップの改訂版では2020年前後にPEFCで80万円、SOFCで100万円まで引き下げる目標を新たに設定した(図4)。この価格まで下がると、エネファームを導入して電気料金を削減できることによって7〜8年で初期投資を回収できる。大量に普及する2030年には5年で回収できる水準まで価格が下がることを想定している。
特に今後の普及が見込まれるSOFCに関しては、国が中心になって技術開発プロジェクトを推進して2019年までに低コスト化を図る。コスト削減の可能性が最も大きいのは燃料電池の本体を構成するスタックである。発電効率を向上させる技術の開発などを通じて45%程度のコスト削減が可能になる見通しだ(図5)。
さらにエネファームで発電して余った電力を固定価格買取制度で取引できるようにする検討も進めていく。早ければ2017年度から太陽光発電と同様に家庭の自家消費分を除いた余剰電力を買い取る仕組みを整備して、一般家庭のあいだにエネファームの導入機運を高める狙いだ。
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