エネファームと同様に燃料電池車にも普及台数の目標を新たに設定した。世界が注目する2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに4万台を普及させたうえで、低価格タイプの市場投入が見込まれる2025年には20万台、さらに2030年までに80万台へ増加させる(図6)。
燃料電池車はトヨタ自動車が2014年12月に「MIRAI」を発売したのに続いて、ホンダが2016年3月に「CLARITY FUEL CELL」を発売して2車種になった(図7)。いずれも車両価格は700万円台と高く、国や自治体の補助金を利用しても400万円以上になる。それぞれ出荷台数も限られている。
政府が期待をかけるのは現在の第1世代の次に2020年あたりに登場する第2世代、さらに2025年までに市場投入を想定している普及タイプの第3世代だ。2025年には自動車に搭載する燃料電池のコストが現状の4分の1程度まで下がって、車両価格がハイブリッド車と同等になることを見込んでいる。
戦略ロードマップでは価格目標は設定していないが、ハイブリッド車の代表格であるトヨタの「プリウス」が300万円台であることを考えると、普及タイプの車種では燃料電池車でも300万円台で購入できるようにする必要がある。
加えて燃料電池車の普及に欠かせない水素ステーションの整備も大きな課題だ。政府は2015年内に4大都市圏を中心に100カ所の水素ステーションを整備する目標を掲げていたが、2016年3月の時点でも移動式を含めて86カ所にとどまっている(図8)。
改めて2016年度内に100カ所まで増やしたうえで、燃料電池車の普及台数に合わせて2020年度に160カ所、2025年までに320カ所へ拡大する目標を設定した。そのために水素ステーションの標準仕様を確立する対策などを通じて、現在は1カ所で4億円もかかる建設費を2020年をめどに半減させる方針だ。
さらに通常の水素ステーションとは別に、地域の再生可能エネルギーを利用したCO2フリーの水素ステーションを2020年度までに全国100カ所程度に増やす。これから再生可能エネルギーの発電設備が地方を中心に拡大していくと、余剰電力が大量に発生するようになる。その電力からCO2フリーの水素を製造して燃料電池車に供給できれば、エネルギーの地産地消が進んで地方の活性化につながる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.