日本版 電力自由化の特徴「Bルート」、活用できるサービスが開始IT活用

IIJは電力小売事業者やスマートメーターを活用したサービス提供企業に向けて「スマートメーター Bルート」の活用に必要なシステム基盤の提供を開始する。2015年6月からトライアルでの展開を進めてきたが、2016年4月から商用サービスを本格展開する。

» 2016年04月01日 15時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 電力会社(一般電気事業者)が家庭やオフィス向けに設置を進めているスマートメーターの通信経路には、Aルート、Bルート、Cルートの3つのルートが存在する。Aルートはスマートメーターと電力会社をつなぐルートで、電力会社に電力使用量などのデータを送る時に利用される。Bルートは、スマートメーターとそれが設置されている建物内のHEMS(家庭用エネルギー管理システム)を結ぶルートだ。例えば、家庭内で使用している機器のオンとオフによって電力がどう変わるかなどの状況が見えるようになるため、デマンドレスポンスなどに効果を発揮する。Cルートはこの電力会社に集まったデータを第三者が活用するためのもので、電力会社とその第三者を結ぶルートとなる。

photo 図1 スマートメーターの通信ネットワーク。出典:資源エネルギー庁

日本独自の特徴である「Bルート」向けサービス

 インターネットイニシアティブ(IIJ)が特徴的なのが、このBルートに絞り込んだサービスを構築しようとしている点だ。電力小売全面自由化のカギを握るのがスマートメーターである。電力会社の切り替えにはスマートメーターの設置が必須となっており、また東京電力の工事遅れなどが問題となっている(関連記事)。

 電力自由化が進んでいる先行国などでは既に家庭でのスマートメーターの設置や活用が進んでいるが、「Bルート」を活用し家庭のHEMSとの連動を進めるような取り組みは世界でもあまりない例である。いわば日本版電力自由化の1つの特徴が「Bルート」による新たなビジネスモデルというわけである。

 IIJではこのBルートを活用した新たなサービスや製品の登場などを想定し、2015年6月にスマートメーター「Bルート」を活用したサービスを提供するためのシステム基盤を開発。トライアル環境の無償提供を進めてきていた。約30社のトライアル利用を通じて機能の改善や強化を進め、2016年4月から商用サービスに移行することを決めた。

 新サービス「IIJスマートメーターBルート活用サービス」は、スマートメーターの検針データをリアルタイムで取得し、連携するクラウドシステムと通信を行うサービスアダプター「SA-W1」と、スマートメーターを活用したサービスを提供するためのシステム基盤「PMS(Power Metering System)」で構成される。トライアル版に対し、正式サービスでは、新たに売電量を把握するための逆方向定時積算電力量や瞬時電流値のデータ取得に対応し、太陽光などの再生可能エネルギー発電ビジネスでの活用も可能としている。さらに、端末の接続状況を詳細に確認するため、スマートメーターの無線電波強度や取得データの欠損率を管理画面に表示する機能などを追加し、利便性強化を進めている(図2)。

photo 図2 IIJの「IIJスマートメーターBルート活用サービス」の概要図(クリックで拡大)出典:IIJ

 提供価格は個別見積もりで2016年度中に50社の受注を目指すとしている。今後は、高圧需要家(工場、ビルなどの大規模施設)向けスマートメーターBルートに対応し、リアルタイムで使用電力値を表示するデマンド管理機能を追加していく予定。また、トライアル環境は、有用性や実用性を事前に検証する目的で今後も利用可能だという。

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